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第1832号 ほろほろ通信『大きな包みの中身は…』志賀内泰弘

豊川市の鹿島喜代香さん(72)が42歳の時の話。当時、准看護師として市民病院で働きながら、看護師を目指して夜間の看護学校に通っていた。

三年間勉強し、試験まで二週間と迫ったある日のこと。車を運転して帰宅する途中、信号無視の車に追突されてしまった。頭と首にけがを負う。幸い命に別状はなかったが、むちうちになりひどい頭痛に悩まされた。

試験の前日、看護学校の先生の付き添いで、二十名の受験生とともに会場の名古屋へ。先頭を歩く先生は、何やら大きな布の包みを抱えている。その晩は近くの旅館で泊ることになっていたので「普段の自分の枕を持って来たにちがいない」と思っていた。

ところが翌朝、試験会場へ向かうバスの中でも、その包みを抱えている。会場に着いてその理由がわかった。先生は鹿島さんの席まで着いてきてくれ、その包みを机の下に置き「この上に両足を乗せなさい。姿勢が楽になるわよ」と言ってくださった。おかげで、ずいぶんと身体の負担が軽くなった。

午前の試験が終わって昼の休憩時間になると、頭痛が激しくなってきた。先生はいすを並べて「横になりなさい」と言い、包みをほどいた。中からは一枚のタオルケットが出てきた。このことを予期して、用意してくださったのだった。タオルケットにくるまりながら、涙がとめどなくあふれてきた。おかげで見事合格できた。

鹿島さんは、この出来事を胸に「今、目の前の人が何を必要としているのか」を仕事や日々の生活の中で心掛けて生きて来たとおっしゃる

<中日新聞掲載 2009年6月21日>