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第1821号 ちょっといい話『編集長の4月のブログから』志賀内泰弘

志賀内が「ものかき」として、まだ駆け出しの頃から、志賀内を発掘し辛抱強く育ててくれている人がいます。PHP研究所の大谷泰志編集長です。それは過去形ではなく、今も忌憚ない、ストレートなアドバイスをして下さるかけがえのない人です。(とはいうものの、志賀内「だって、にんげんだもの」、人の子ですから、自信を持って書いたつもりの文章にダメ出しされると、そのたびに「コノヤロー!」と思いますが・・・苦笑)

さて、その大谷さんの2015年4月10日のフェイスブックから、転載させていただきます。

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「ちょっと思い出した話」

大谷泰志

30年前の4月、ある著名カメラマン二人とキャノンギャラリーの所長が、銀座の寿司屋にいた。Mくんはそのうちの一人の写真家の弟子である。師匠はこういう時、駆け出しの弟子であっても同席させるのが常だった。もう一人の写真家の弟子は、店の外で師が出てくるのを待っていた。

Mくんは、師匠たち三人と並び、カウンターで寿司を食べ始めた。話題はカメラにまつわる様々なことに及んだ。弟子になったばかりのMくんには理解できない話が多い。ふと見ると、カウンターの内側に同世代の寿司職人がいた。Mくんはいい相手を見つけたとばかり、雑談に興じた。

しばらくして、師匠がトイレに立つ。その時、キャノンギャラリーの所長が、Mくんだけに聞こえるように話しかけた。

「私たちの話はきみには難しいかもしれない。でも、半分ぐらいはわかるだろう。先生がこの場にきみを連れている意味がわからないか。こちらの先生のお弟子さんは、外で待っているんだよ」

やんわりと諭すような口調だった。いつものMくんなら、反発していた。ただ、その時はなぜかその理屈がストンと呑み込めた。

以来、師匠が自分に語る教えだけでなく、師匠が人と話す会話をも、しっかり聞き耳をたてる姿勢が身についた。素直に改心したMくんも見事だが、この所長の行動もまた素晴らしい。自社の社員ならまだしも、よその若い人に注意することは気がひけるものだ。

この話に接した時、キャノンという会社が単にカメラを作るだけではなく、写真文化そのものを支えているように思えた。Mくんはいま、自分のスタジオを持ち、数人の弟子を抱え活躍する写真家になっている。新幹線のなかで、研修を終えたような新入社員の集団に出くわし、ふとこの話を思い出しました。

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「昭和」の人たちの間では、今、戸惑いが広がっています。

「若い人に何も言えない」
「ホントにそいつの将来のことを心配しているのに、下手するとパワハラだと言われる」
「叱れない。叱ると会社に出てこなくなる」
「何も言わない方が楽だからいいけどな・・・淋しいけど」

志賀内は、会社を辞めてしまいましたが、それでも若者に「言おうか、言わまいか」と悩むことがあります。「言う」には、それ相当の「勇気」がいるのです。「嫌われたらどうしよう」とか、「反抗されてもめるのも嫌だしなぁ」と迷うのです。そんな「迷い」の日々の中で、大谷さんが紹介してくれたこのお寿司屋さんのエピソードは心に響きます。

実に、「意見する」一言がカッコイイ。「言われる」側の気持ちにも配慮がある。せっかく「言う」のだから、相手が「素直に」受け止められる「言い方」をしなくちゃ、ただの自己満足になってしまう。

けっこう「いい歳」にはなってしまいましたが、自分も若者であった時の心を忘れず、勇気を持って「もの言う」オジサンに、そして、いつまでも「言われたら」素直に受け入れられる「永遠の少年」であるよう努めたいと思うのでした。