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第1815号 ほろほろ通信『天井に上がった風船を』志賀内泰弘

半田市の新美ゆかりさん(45)が、スーパーマーケットに買い物に出掛けた時の話。その日は会員向けのセールで、店内はたいへん混雑していた。10台余りあるレジは、どの列も15人以上もの人が並び、みんなイライラしていた。

新美さんの番まで、4、5人になった時のことだ。少し離れたところで、子どものぐずる声が聞こえた。ふと振り向くと、赤ちゃんを抱いた若いお母さんが、天井に上がってしまった風船に手を伸ばして取ろうとしていた。おそらく、カートに座らせているもう一人の幼児が手を離してしまったのだろう。

「せっかくここまで並んだけど、助けに行かなくちゃ」と思った直後のことだ。一人の50代の女性が駆け寄った。商品棚の上に置いてあった広告用の旗のポールを手にして、風船のひもに引っ掛けようとする。いったん下がっては来るのだが、すぐにまた天井へ戻ってしまう。そんな繰り返しが続いた。

その様子をみんなが見守り始めた。近くのレジで並んでいた3、4人が応援に加わった。悪戦苦闘の末、ポールで引っ掛ける人と、飛び付く人たちとのタイミングが合い、ようやく風船をつかまえることができた。

風船を手にした子どもが笑顔になった。周りを見回すと、その様子を見ていた何十人ものレジ待ちの人たちの表情が、パッと明るくなった。無言で応援していたのだ。新美さんはおっしゃる。

「暗いニュースばかり報道されますが、世の中捨てたものじゃないですね。助け合う気持ちを大切にしていきたいと思いました」

<中日新聞掲載 2009年4月5日>