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第1803号 ほろほろ通信『夫婦で営むたこ焼屋さんで』志賀内泰弘

ご夫婦でたこ焼き屋さんを営む小牧市の鈴木節子さん(61)は、店を始めてこの春で10年になる。

1月の寒い夕暮れ時のこと。中学1年生くらいの男の子がやって来た。「6個ください」と言う。鈴木さんの店では、6個、8個、10個という単位で販売している。残りの8個が売れたら店じまいしようと思っていたところだった。「最後だからサービスね」と8個を詰めて手渡した。

少年は店先で食べ終えると、プラスチック容器を自分の自転車のかごに入れた。中には道端に捨ててしまう人もいる。「家に持って帰るんだな」と感心した。当たり前のことがなかなかできない時代だ。

「私が片付けてあげる」と声を掛けてごみになった容器を受け取った。すると「おいしかったです。ごちそうさま」と答えてくれた。それだけではない。こちらを向き直すと、両手を合わせて深々と頭を下げたのだった。まるで托鉢のお坊さんのように。中には「お金を払って買ってやっているんだ」という態度の人もいる。食べ物に感謝する心が伝わり、すがすがしい思いがした。

幼稚園や小学校のころからのお客さんが、わざわざ訪ねて来ることがある。「大学に受かったよ」とか「社会人になったよ」「里帰りしたんだ」と報告してくれる。「少し早いけど所帯を持ったんだ」と赤ちゃんを連れて来た子もいた。ご多分に漏れず、小麦やタコなどの原材料高騰で苦しいが、そんな声を聞くとなかなか値上げもできない。「無理せず長く仕事をして行きたい」とおっしゃった。

<中日新聞掲載2009年3月15日>