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第1784号 ほろほろ通信『おだいじに』志賀内泰弘

津島市の増田美代子さんは、一月に九十一歳を迎える。入院中のベッドの上から便りをいただいた。

激痛が続くが痛み止めの薬が効かない。眠れない。目も耳も衰えたため、テレビやラジオも楽しめない。食事は細かく刻んであるので、何を食べているのかさえわからない。そんな中でも、いつだったか覚えた言葉「水に流せばサラサラと紅葉も昨日も流れます」を時々口ずさんでは心を落ち着ける。

入院が長くなり、見舞い客も途絶えた。それでも六十七歳になる息子さんが、ほとんど毎日、新聞と着替えを持ってやって来る。文句一つ口にせず。その数は千三百回を超えた。日々、数えているのだという。その息子さんの体を思い、真夜中の白い天井を見つめ「無事であれよ」と両手を合わせて般若心経を唱えている。

今の病院は五カ所目。転院のたびに付き添っていただいたヘルパーさん。雪の舞う日に掛け布団をプレゼントしてくれた人。日用品を持って来てくれた人など大勢にお世話になった。
「人にしてあげたことは忘れてしまえ。人からしてもらった恩は心に刻め」という格言に従い、身内でもないのに親切にしてくれた人たちのことを思い出しては「ありがとう」
と口にしているという。

「手が震えてうまく書けません。痛みが来ました。痛いよおー針が刺す。ぐるぐる回るよ…」と文面は終わっていた。息子さんと電話で話をした。一人で世話をしており、自身も体調がすぐれないとのこと。ただただ「お二人ともおだいじに」と言うのが精一杯だった。

同じように、病院で年末年始を迎えるすべての人とご家族の皆さんへ。どうか、おだいじに。

<中日新聞掲載2008年12月28日>