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第1783号 ちょっといい話『京都駅で出逢った「いい話」』志賀内泰弘

京都が大好きです。京都を訪ねるのは、昨年は30回を超えました。とはいっても、月刊「PHP」誌でよみきり小説「京都祇園もも吉庵のあまから帖」の連載がスタートしたことから、そのほとんどが取材のためです。

さて、2月10日発売の拙著新刊「眠る前5分で読める 心がスーッとして軽くなるいい話」(イーストプレス社)の中に、こんな京都で出逢った「いい話」を収めました。

時間は最大の「おもてなし」の一つ

~「吉兆」の接客に学ぶ~

です。一部を抜粋して紹介させていただきます。

   *   *   *   *   *

京都の駅ビルのホテルグランヴィア京都に、料亭「京都吉兆」が入店しています。以前、宿泊した際に満席で食べられなかったので、ここでランチに懐石料理を食べることを第一の目的にして、京都観光へ出かけました。

席に着き、お箸を手にとって「あっ」と気づきました。湿っているのです。いや、間違ってお箸を濡らしてしまったのではありません。最初から、お箸を湿らせてあるのです。そこへ、タイミングよく、美しい珍味皿の盆を運んできて下さったお店の方が、私の表情に気づいて一言。

「お箸を濡らしておりますが、もし乾いたお箸がよろしければ代わりをお持ちいたします」

乾いた食べ物が、お箸にくっ付かないようにと配慮してとのこと。細やかな気遣いが嬉しくなりました。
一品目に箸をつけ始めたところで、先ほどのお店の方がこう言いました。

「お急ぎの電車のお時間などございませんか。早めにお出しいたしますが」

「京都吉兆」はJR京都駅中央口の真上に位置しています。新幹線のホームまで、急げば5分とかかりません。そんな立地なだけに、ホテルでチェックアウトをして、少し早い昼食を済ませて電車に乗る人も多いのでしょう。

また、観光地ですから、早く食事を済ませて、お目当てのスポットへと心を弾ませている人もいるに違いありません。こうした人たちの心には、グッとくる一言です。もちろん、私もハートを鷲掴みにされました。

私は、
「大丈夫です。ゆっくり頂戴します」
と答えました。でも、すぐ隣の席の老夫婦は、明らかに私のテーブルよりも早いスピードで料理が運ばれてきました。きっと、「できたら急いでください」と頼まれたのでしょう。

一流と言われるお店は、食べ物だけではなく、「心遣い」というサービスを売っています。この時の「心遣い」は、「時間」です。本来は懐石料理は、一品一品を丁寧に味わって食するものです。店内の雰囲気や器の美しさも含めてが料理という芸術の一つだからです。最低でも1時間は食事を終えるのにかかるでしょう。

ところが、開店早々に訪れたランチのお客様。「ゆっくり」味わっていただきたいのはやまやまだけど、「時間」に余裕のないお客様もいます。何より、お客様の都合と気持ちを優先する。けっして、「一流」だからと、上から目線で押し付けたりはしない。

「お急ぎの電車のお時間などございませんか」の一言に、「ほっこり」と心温まりました。時間は最大の「おもてなし」の一つです。

   *   *   *   *   *

★志賀内泰弘の新刊★
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