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第1780号 ほろほろ通信『募金箱に少しずつ』志賀内泰弘

名古屋市中川区の北村安代さん(69)が、ボランティアの仕事に出掛けるため、金山総合駅の南口でバスを降りた時のこと。出入り口付近から、子どもたちの「お願いしまーす」という声が聞こえた。目をやると10人くらいの小学生が募金箱を抱えてずらりと並んでいた。

北村さんの前を20代の男性3人が歩いていた。全身黒ずくめ。革ジャンに革靴、髪が総立ち。耳や鼻にはピアス。バイクのヘルメットを手にし、腰にはチェーンが垂れていた。彼らが近づくと、子どもたちは一斉に呼びかけた。「ユニセフ募金にご協力を」と。すると、そのうちの一人が箱の中に小銭を入れた。子どもたちは声をそろえて「ご協力ありがとうございました」と言う。

ところが、それで終わりではなかった。その男性は、10人の募金箱すべてに順にお金を入れていったのだ。その後に続いて、仲間の二人の男性も同じように10人の募金箱へ。子どもたちの「ありがとうございました」の声が、笑顔とともに連呼された。

北村さんは感心した。ほかの子の箱に募金が入ると「私の箱に入れてくれないかなぁ」と思うかもしれない。仮に同じ100円でも、10円を10人の子の箱に入れることで、子どもたちの励みになるに違いない。

最後には募金箱を抱えていた小学1年くらいの子の頭をなで、3人は来た道を戻って行った。この時、北村さんは彼らがわざわざ募金をするために立ち寄ったことに気付いた。まねをして、全員の箱に募金をしたという。少しずつだけど。

<中日新聞掲載 2008年8月17日>