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第1612号 ちょっといい話『「求めない」努力をするのはたいへんです』志賀内泰弘

ある日、夜遅くに帰宅すると、郵便受けに宅配便の不在連絡票が入っていました。
私自身もよく利用しているクロネコヤマトさんではなく、A社さんのものでした。
翌朝も早くに出掛け、またまた帰宅が遅くなりました。
すると、またA社さんの不在連絡票が入っていました。

(二度も来てもらって・・・)

と、少々申し訳ないと思いましたが、忙しくて気が回りません。
翌日、いったん夕方に家に戻れたので、A社さんに電話をしました。
「ごめんなさい。今からまた出掛けてしまうのですが、
夜七時には帰ります。配達をお願いできますか」
と言うと、

「今日はもうできません。夜の配達は、午後4時までに
お電話いただかないとできないことになっています」
時計を見ると、午後5時を回っていました。
私は、ちょっと「ムッ」としました。
(なんてサービスが悪いんだろう)
クロネコヤマトさんだと、いつも「何時とは言えませんが、
それ以降に伺います」という返事が返ってきたからです。仕方がないので、
「それでしたら、明日の朝、出掛けるのを少し遅らせますので、
9時前にお願いできますか」
と言うと、
「午前中9時から12時の間という形でしか、お約束ができません」
と。今度は、
「では、明日か明後日の夜の配達をお願いできますか。
午後6時には必ず帰っているようにします」
と言いました。ところが、
「土日は、夜間の配送をやっていません。平日でお願いします」
という答。私は、唖然としました。
またまた比較してしまいますが、クロネコヤマトさんとの違いに驚いてしまいました。

(どうしよう・・・)
頭の中で、スケジュールがグルグルと回ります。
考えあぐねて沈黙していると、こう言われました。
「それでは、事務所で預かっていますので、
都合のいい時に取りに来てください」
私は、カチンと来ました。なんという横暴な・・・。
その事務所というのが、不便な場所で、公共交通機関で行きにくい。
自分で車を運転して20分くらいかかるところです。

ついついカッーとなりましたが、平静を保つように努力しました。
不在連絡票に、差出人の名前が書かれていなかったので尋ねました。
このことも、さらにA社に対する不信感を抱いた理由の一つでした。

もし、クール便だったら中身が傷んでしまう。
もし、賞味期限の短いお菓子か何かだったら、
手元に届く前に期限が切れてしまう。
何より、送り主は
「なかなか志賀内さんから『気遣いありがとう。届いたよ』
という電話もハガキも来ないなぁ」
と心配しているに違いない。そう思いヤキモキしたのです。
電話口でA社の人から送り主の人の名前と電話番号を聞き、
すぐに電話をかけました。
「ごめんなさい。実は・・・こういう事情で、まだ荷物を受け取れないのです。
だから何を送って下さったのかもわからないけど、急ぎお礼だけをと思って・・・。
賞味期限が短いものではありませんでしたか?」
「大丈夫ですよ。ご迷惑をお掛けしました。
この前のお礼に、お返しを送ったつもりがこんなことになって。
賞味期限は、ずっと一月以上先なのでご都合のいい時に受け取ってください」
と言われ、私は、
「ありがとうございます。安心しました」
と答えました。

さて、翌日のことです。
少々、頭に血が上っていた私でしたが、一晩眠って落ち着きました。
今まで、優れた「おもてなし」をしている会社やお店のことについて、
たくさん書いてきました。「いい話」はないか、素晴らしい接客をしている人はいないか。
タクシーや新幹線に乗っても、レストランやホテルに入っても、
どこへ出掛けても、その点に目が行きます。
(でも、ちょっと待てよ)
と思いました。
今回のことって、私がクロネコヤマトさんの心憎いほどのサービスに
慣れてしまっているために、それを「当たり前」だと思い込み、
そのレベル以下の会社に対して「何やってんだ」と、
勝手に腹を立てているだけではないかと。

電通の事件を発端に「働き方」が注目されるようになりました。
それ以前から、ブラック企業がやり玉に遭う世の中になってきました。
実は、その背景には、企業に対して高いサービスを求める、
消費者の側にも責任があるのではないか。
そう、その消費者というのは、私自身のことです。
クロネコヤマトさんが、
「ここまでやっているのに・・・」とA社さんに不平を言う。
「もっと努力しろ」と「求める」ことをしたら、
それがA社さんの社員やアルバイトさんたちの労働環境を
悪くしてしまうかもしれない。
ひょっとしたら、私が「求める」ことで、ブラック企業になってしまったら・・・。
そう考えると、ゾッとしました。

でも、私は、やっぱり利用する際には、サービスの良い運送会社を選びたいし、
「おもてなし」の良いお店に行きたい。「求める」ことには際限がなく、
「もっと、もっと」と上を「求めて」しまう自分がいます。

「求め過ぎないようにしよう」
と、今回のことで少々反省をしました。
でも、「求めて」しまう。
「求めない」努力をするのはたいへんです。