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第1126号 ちょっといい話『心と気とをはたらかす』志賀内泰弘

織田信長といえば、家臣をまるで道具のように扱い、 冷徹で残虐なイメージがあります。 本願寺との戦いや比叡山の焼き討ちなどは、その一例でしょう。 そのため、「恐れ」が募り、光秀の本能寺の変へと繋がります。

しかし、信長は、細やかな「心」の持ち主でした。 「備前老人物語」のいう書物に、こんな話が書かれているそうです。

ある時、信長が居室に小姓を呼びました。呼びはしたけれど、 「別に用事があるわけではない」と言い、下がらせます。 また別の小姓を呼びました。また同じように、 「別に用事はない」と言って下がらせます。 さらにもう一人の小姓を呼び、同じことを言いました。

ところが、この小姓は下がる時に、畳の上に塵が落ちているのに気づき、 そっと袂に入れて下がったというのです。 「あれが武辺というものだ」 と言い、その心遣いを褒めました。 信長は、こう言っているそうです。 「惣じて人は、心と気をはたらかすをもって善しとす」

テレビドラマなどでも有名なシーンがあります。 大勢の人前で光秀をののしり、ときに頭を押さえつけて床に叩きつける。 なぜ、そんなにも光秀のことが気に食わなかったのか。 実は信長は、光秀の「気の利かないところ」が嫌いだった・・・らしいのです。 もし、光秀が「気ばたらき」のできる人物だったら、歴史は変わっていたかもしれません。

さて、現代社会での話。 「ホッチキスの芯が切れたから持って来てくれ」 と上司に頼まれたら、 「書類はたくさんありますか。閉じてお持ちしますが」 という気はたらきをされたら、 「むむっ、こやつデキルな」と可愛くなるものです。

就職試験の面接官は、「いったい誰を採用したら良いか」と悩むそうです。 みんな面接対策のセミナーを受けて来ており、卒なく答える人ばかり。 全員が模範解答だからです。

そんな時、もし、件の信長のように、廊下にわざとゴミを落としておいて、 控室から面接室までの間に気づいて拾ったら 「合格!」なんていうテストはいかがでしょうか。 きっと、それができる人は、社内の仕事は言うに及ばず、 お客様への対応も優れているに違いありません。

もう一つ。こんな話もあります。 徳川家康が、竹千代と呼ばれていた人質時代の話です。 周りの人たちは、「心がお優しい」と褒め称えていたと言います。

古来、日本では人の大将たる二大要件がありました。 それは、「威」と「思いやりの優しさ」だそうです。 「威」とは、「威風堂々」の「威」。人を恐れさせ、従わせる力のことです。 しかし、これは努力して身に付くものではない。竹千代には、自然に備わっていたそうです。

そして、もう一つが「思いやりの優しさ」。 大将になるには、「知恵」とか「勇気」が必要な気がします。 でも、それらは、それらを備えた優秀な補佐官がいれば済んでしまう。 そんな優秀な部下から慕われるには「思いやり」の方が欠かせないというわけです。

ということは・・・。

社長や管理職など、上の立場の人も、人に使われる部下も、 「気ばたらき」ができ「思いやり」の心を持つことが最も大切だということになります。 歴史に学ぶところ多し。司馬遼太郎著「覇王の家」(新潮文庫)からのエピソードです。