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月刊誌プチ紳士からの手紙






小冊子_表紙「ギブギブ」

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第1144号 ちょっといい話『「ありがとう」の思いを伝えたい(その1)』志賀内泰弘

京都に柿本商事株式会社という会社があります。紙専門の商社です。 寺町通りで「紙司柿本」という小売店も経営しています。 偶然ですが、この店の大ファンで「かばんが重いよ~」と後悔するほど、 ハガキや便箋を買い込んだことがあります。

さて、柿本商事さんではCSRの一環として、 「言の葉大賞」というコンテストを開催しておられます。 「心温まる言葉、心にぐっと響く言葉、そのような伝えたい思いを、 紙にしたためご応募ください」と全国に呼び掛けられました。

「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動事務局が主催している 「たった一言で」コンテストと、大いに趣旨が重なります。 そこで、第四回の入選作品から(第四回までは、恋文大賞という名前)、 二つ紹介させていただきます。

《入選作品》   *   *   *   *

「ごめんね」 佐賀県鳥栖市 篠原正子(60歳)

「ごめんね」 あんたの頭を撫でながら母さんは言ったね。 もういい加減な年のおっちゃんになったあんたは、 母さんを許してくれるだろうか。

三十六年前、我家を選び、知的障害のある子として生まれて来たあんた。 医師に「三歳位までしか生きられないでしょう」告げられた言葉に、 胸が締め付けられ何をどうして良いのか分からなかった。 でも婆ちゃんが、 「命ばもろうて生まれてきたっちゃけん、皆で頑張って育てよう」 そう言ってくれた。

短命ならば精一杯の愛情を注ごうと決心して育ててきた。 あんたは体が弱くて何度も生死をさ迷い、徹夜の看病もしばしばでした。 合併症もあり小さな体、細い血管、入らぬ点滴の針はどんなにか痛かっただろうね。 その度に、生きようとするあんたの強い心が死を遠ざけ、短命の言葉をはねのけてきた。

この三十六年の間、夫婦の危機や姑とのいざこざも、仕事が不調な時も、 あんたの真っ直ぐな心と澄んだ目が、どれだけ母さんたちを支えてくれただろう。

そんなあんたに手を挙げてしまった母さん。 あんたの予想しなかった早めの老化現象と、母さんの思い通りにならぬ、 あんたの行動に腹を立て、イライラが爆発 「あんた、そぎゃん言うこと聞かんなら、もう施設に帰らんね、うちにおらんでよかよ」 暴言を吐き頭を叩いてしまったね。 そしたらあんたは、驚いたように母さんを見て、 「僕は帰ります。園に帰ります」 小さな声で言いました。

その夜、母さんは布団の中で長いこと大きな声で泣きました。 虐待にも似た仕打ちを何でしてしまったんだろう。 あんたさえ居なければと思ったりしたんだろう。

「ごめんね、ほんとにごめん」

この手紙書いても読めないあんただけど……あんたが大好きだよ、 そして母さんを許すと言って欲しい。

《入選作品》   *   *   *   *

「私の双子のお母さんへ」 福岡県田川郡 佐藤璃奈(25歳)

今、私がこの世にいるのは、お母さんの存在があってこそ。 生まれつきネフローゼ症候群と診断された私。 五才の時にお母さんの腎臓を移植してもらってから、私達は双子になったね。

私の腎臓は二つとも機能してなくて、 お母さんの腎臓が一つ私のお腹の中に入っている。 二人で一つの命を共有しているね。

命があるだけで幸せな事なのに、私はとても弱いまま。 免疫抑制剤の副作用から出来た顔中の吹き出物。 小さな頃から浴びせられた、たくさんの嫌な言葉達。刺す様な視線。

お母さん、ごめんね。身体は元気になったはずなのに、心は弱いままだね。 でもね、私はたくさんたくさん悩んだけど、これだけは胸を張って言えるよ。 お母さんの娘に生まれてくる事が出来て良かった。 この家族の中に生まれる事が出来て良かったって。

外が怖くて、仕事も出来なくて、メイクも出来ずにいる。 そんなどうしようもない私をいつも支えてくれる、お母さん。 決して弱音を吐かずに明るく笑い飛ばしてくれる、お母さん。 「こんな顔、嫌だ」 「あんたみたいな顔、滅多におらんき会った人は皆、  覚えてくれるやろ? だき、いい顔やん!」 私ね、お母さんのおかげで自分が大好きでいられるんだよ。 障がいは病気じゃない。 強くなれる。優しくなれる。私だけの特別な物語が紡げる。 無駄じゃない。無駄になんてしない。全て、意味のある事だから。 私は私の姿で生まれてくる事が出来て、本当に幸せだよ。 女同士、普段は口喧嘩ばかりで上手く言えないけど……。 お母さん、私を産んでくれてありがとう。私、もっと強くなるからね。 一番苦労をかけた分、一番の親孝行者でいたい。 お母さんの片割れを持つ、璃奈という私。 言葉にしなくても私の喜怒哀楽の全てを分かってくれる、たった一人の私のお母さん。 だけど、この言葉はきちんと伝えたい。 ありがとう。 ありがとう。 私は、お母さんの双子として生きている。 世界一の幸福者だよ。 お母さんの娘  璃奈より

   *   *   *   *

○入選作品集がお求めになれます 「「ありがとう」の思いを伝えたい。」 「恋文大賞」編集委員会【編】京都柿本書房

http://www.koibumi-kakimoto.jp/books/index02.html

○第五回「言の葉大賞」入選作の一部と第六回の応募要項はここからご覧になれます。 http://www.kotonoha-taisho.jp/