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第1601号 ちょっといい話『開けっ放しのドアを閉めて学んだこと』志賀内泰弘

ほとんど毎日、家から歩いて20分ほどの
ところにあるスターバックスへ通っています。
最初は、本を読みに出掛けていたのですが、
いつの間にか第二の仕事場になってしまいました。
それほど、居心地がいい。
もちろん、ロケーションも最高なのですが、
スタッフの「おもてなし」に惚れたのです。

さて、それほど通い詰めていると、
いくら心のベクトルを「明るい方向」へ
向けようと心掛けている志賀内でも、
不快な思いをすることがあります。
その一つ。

出入りする際に、ドアを開けっ放しにする人がいることです。
特に、寒波が到来し木枯らしが吹く日は、
外から吹き込む外気で、店内の気温はあっと言う間に下がります。

混んでいると、スタッフさんがすぐにドアを閉めに行くことができません。
そんな時、ドアの近くに座っている「誰か(お客さん)」が締めます。
遠くから、スタッフさんがペコリとお辞儀をして、
目で「ありがとうございました」とサインを送ってくれます。

常連客の一人としては、そんな光景を見ていると、嬉しくなります。
お客ではあるけれど、この店は「自分たちのお店」でもある。
スタバのお客様には、私のように「熱烈ファン」が多いのが特徴です。
そんな仲間意識が知らぬ間に芽生えているのですね。

私も、たびたび閉めに行きます。
その時、心のどこかに「正義感」が潜んでおり、
開けっ放しにした人の行為を「正す」ことを
誇らしく思っている自分がいました。
でも、それが、こちらが想像する以上に、
人を嫌な思いにさせることに気付きませんでした。

さて、ある日のことです。
その日も寒かった! 底冷えというのでしょうか。
ベビーカーを押した母親と幼稚園くらいの女の子が店に入ってきました。

また、です。ドアが開けっ放しです。
比較的近くに座っていた私は、
心の中で「なんだよ、この寒いのに」と憤りながら立ち上がり、
駆け寄ってドアを閉めました。
風で押されて、ドアがバンッと音が立ちました。
席に戻ろうと踵を返した時のことです。
レジで注文しようとしていた二人の子ども連れの母親が、
こちらを向き「ごめんなさい」と頭を下げたのです。

(ああ~しまった~)
記憶はないのですが、ひょっとすると私は、
「チェッ」と口にしていたかもしれない。
それが聞こえて、母親は、責められたような気持になったかもしれない。
私は、閉め忘れた人の代わりにドアを閉めた。
スタッフの代わりにドアを閉めてあげた。
他のお客様のためにも、ドアを閉めた。
そして、何より、自分が寒い思いをしたくないので閉めに走った。

でも、その好意が、母親には皮肉られているかのように思えたに違いありません。
その母親は、幼い子供のことで精一杯の毎日かもしれません。
そんな中、どこかへ出掛けた帰りに、ホッと一息つこうとスタバ立ち寄った。
早く席に腰かけて、体と心を休ませたい。
・・・けっして、わざとではなく、たまたまドアを閉め忘れてしまっただけ。
疲れていたり、忙しなくて心に余裕がない時、誰でもそういうことがあります。
それを私は、あたかも責めるような行為をしてしまったのです。

じゃあ、開けっ放しでいいのか。
スタッフさんが仕事の手を中断して、閉めるまで待っているのがいいのか。
それでは、店内は冷え切ってしまいます。
ドアが開けっ放しになっていると、次のお客様は、
そのまま閉めずに入ってくるケースが多いこともわかりました。
「換気のために、わざと開けているのかな」
「閉めたら、またお店の人が開けに来るだろうか」
と、迷いつつも、そのままにするのでしょう。

実は、私が訪れるうちの4、5日に一度くらいの頻度で、
ドアが開けっ放しにされるシーンに出くわします。
そこで、こんな試みをしてみました。
開けっ放しのドアから一旦、外へ出て、ドアを閉めます。
そして、二、三歩歩いて、深呼吸。
再び、そのドアから入ってくる。

また、こんなことも。
別のドアから一旦、外へ出ます。
そして、開けっ放しになったドアから入り直して締めるという方法です。
すると、ドアを閉め忘れた人に対して、皮肉っぽくは見えません。
でも・・・ちょっと時間がかかる。

こんな話を友人にしたら、
「お前考え過ぎじゃねぇの」
とバカにされました。
でも、あの時の、母親の申し訳なさそうな顔が忘れられないのです。

先日、女性スタッフMさんにこの悩みを聞いてもらいました。すると、
「ごめんなさい、気を遣わせてしまって。
私たちがしなくてはならないことなのに」
と言われてしまい、恐縮してしまいました。
「Mさんは、こんな場合、どのようにされますか?」
と尋ねました。広く知られているように、
スターバックスには接客のマニュアルがありません。
お客様が心地よく過ごすことができるように、
一人ひとりのスタッフ(パートナーと呼ぶ)が、
おのおの自分の考えで行動しています。
「あくまでも個人的な考えですが」と前置きして答えてくれました。
「私は、ラウンドのフリをして、ドアを閉めます」
「ラウンドって?」
「あ、ごめんなさい。見回りのことです。
テーブルを拭いたり、椅子を直したり・・・その途中でドアを閉めれば、
お客様に嫌な思いをさせなくても済むのではと」
「なるほど!素晴らしい!!」

でも・・・私もラウンドするわけにはいきません。
どうしたものかいなあ~。
そうだ!家からエプロンを持って来て、
パートナーのフリをして、ときどきラウンドしようか(笑)。

「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動を続けて12年。
まだまだ、トホホです。
たかがドア、されどドア。ドアを一つ閉めることから、
徒然なるままに考えた冬の日の出来事でした。