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第1279号 ちょっといい話『おもてなし日和』志賀内泰弘

前リッツ・カールトンホテル日本支社長で、 人とホスピタリティ研究所代表の高野登さんの新刊 「おもてなし日和」(文屋)が好評です。

高野さんと言えば、ご存じの名著であり、ロングセラーの 「リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間」(かんき出版) が有名ですが、今回の本は、累計50万部におよぶ、 20冊の本の中では異色の編集になっています。

高野さんと同じ長野県出身の写真家・清水かほりさんの写真とのコラボであり、 また、横組みの文章でもあることから、まるでフォト詩集のようなのです。

その中から、高野さんが講演でもよく話されるエピソードであり、 志賀内の最も好きなエピソードを紹介させていただきます。

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「種絆の糸をつかむ」

講演会に参加するためにホテルを訪れたA氏。 会議場脇のクロークに荷物を預けながら、 ふと名刺入れを見ると、なんと5枚しか残っていない。 先の会合で配ったことを忘れて、補充し忘れたのだ。

クロークの女性は、Aさんの表情に気づいた。 「お客様、どうかなさいましたか?」 「いや、名刺を補充し忘れてしまってね。 5枚しか残っていないんだ。参ったなあ。」 「それはお困りですね。何枚ほど必要なのですか?」 「うん、少なくとも30枚はないとまずいんだ。」

これを聞いた彼女はすぐにこう提案した。 「少し薄い紙になりますが、カラーコピーでよろしければ、 私がとってまいります。その5枚、お預かりできますか?」

A氏の嬉しそうな表情が、目に見えるようだ。 次に、こんな場面をご想像いただきたい。

ホテルに1泊した朝の8時。 あなたは眠い目をこすりながら、 ルームサービスの朝食メニューを見ている。 前夜、お客さんと飲みすぎて、少々胃が重い。 できれば軽めの汁物がありがたい。そばか、うどんか。 そう思ってメニューを眺めても、それが見当たらない。

ふと、夜食メニューに目を移すと、 「きつねうどん」とある。 しかし夜食の時間帯は深夜12時から朝6時まで。 すでに2時間も過ぎている。 あなたはダメもとでルームサービスに電話を入れる。 「今の時間では、夜食のきつねうどん、無理だよね?」 「○○様、もちろん大丈夫です。料理長に伝えてまいります。 20分ほどお時間をいただけますか?」 スタッフからこんな返答をもらったら、どうだろう。 心がほっこりと温かくなるのではないだろうか。

お客様は、さまざまな想いをホテルに投げかける。 これは、いうなれば「絆の糸」。 では、こうしたお客様からの「絆の糸」に気づくのは 誰だろうか?

宴会場のクローク、ルームサービスの電話係。 そう、現場でお客様と向き合うスタッフたちだ。 彼らだけが、 お客様から投げかけられる「ニーズという絆の糸」を 受け取るチャンスを得ることができる。

社長、総支配人、取締役、部長、総料理長。 組織のリーダーは、 ひとたび“バベルの塔”にこもってしまうと、 お客様のこうした声が現場にたくさん届くことを 忘れてしまいがちだ。 しかし、こうしたリーダーこそが、 「絆の糸」に誰よりも敏感でなければならない。

「絆の糸」をしっかりとつかむことができるか、 あるいは、現場の判断でそれを切ってしまうのか。 この現場の力と感性こそが、 会社の発展や永続を左右する岐路となるのだから。

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