たくさんのいい話をたくさんの人に読んでもらいたい・届けたい・広げたい【運営】プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動

無料メールマガジン
いい話を読む
いい話を投稿する
みなさんの感想
いい話グッズ購入

いい話を読む

月刊誌プチ紳士からの手紙






小冊子_表紙「ギブギブ」

souji_bnr02

第818号 ココロのメルマガ小説『猫を探しています。 後編』志賀内泰弘

姿を見せなくなり1週間が経った。子供たちはミーちゃん、ミーちゃんと心配していた。
ひょっとして、交通事故に遭ったのではないか。
そんなことを子供たちの前で口にできるわけもない。

「あのう・・・もしよかったら・・・」

杏子は、ずっと考えていたことを園長婦人に提案した。

「うちの店にインフォメーションボードがあるんです。
 お店のイベントとか安売りのチラシとかを貼ってあるんですけど。
 それとは別にですね。
 もう一つインフォメ-ションボードを作りますから、
 迷い猫の案内を出されてはいかがでしょうか」
「あら、それはいいわ。ありがとうございます」

それは二つ返事で決まった。
杏子は、一番お客様の目に留まりやすい自販機の隣の壁に、
新しいボードを設置。そこへ、園長婦人と子供たちの手作りの案内を張り付けた。

「迷い猫を探しています」

そこには、幼稚園の女の子と猫の頬を
寄せたツーショットの写真が貼られていた。

杏子は思った。ダメモトでいい。そう簡単に見つかるはずもない。
でも、何かお役に立ちたい。形だけでもいいから、地域の人に頼られる店作りをしたい。
これは、そのきっかけなのだと。

ところが、ところが、である。
駅前の酒屋さんの奥さんから、またまた頼まれごとを受けた。

今度は、子猫のもらい手を探して欲しいというのだ。何だか妙なことになってきた。
設置早々のインフォメ-ションボードは、猫の話題ばかり。
それを見たお客様に「猫専用」だと勘違いされてしまうのではないか。
そう思いつつ、その依頼も引き受けた。

翌日、酒屋さんの奥さんが、パソコンで手作りしたポスターを持ってお店にやってきた。
5匹の生まれたての子猫の写真がキレイに写っている。

「お上手ですね。レイアウトも上手いし、
 『カワイイ子猫を飼いませんか?』の文字もステキ!」
「あら、ありがとう」
「これならきっと、すぐに引き取り手が見つかりますよ」

そう言い、奥さんをインフォメ-ションボードに案内し、
見やすいように張り付けた。

「え!?」

その時だった。奥さんが、ボードに釘付けになった。
幼稚園の「迷い猫を探しています」のポスターを指差し、

「コレ、どういうことですか」
「え? どういうことって・・・」
「この猫、うちのレモンちゃんですもの」
「えええ!」
「間違いありません。黄色い首輪に鈴。
 それより何より、右耳だけこんなふうに茶色なんて珍しいでしょ」

杏子は、ケータイを手にして、夢中で幼稚園のアドレスを探した。
すぐそばで、酒屋の奥さんが、いったい何事なのかという顔をして杏子を見つめていた。

5匹の子猫のもらい手はすぐに見つかった。
すべての話が決まるまでわずか3日。

杏子は、自分の発案ながら、インフォメーシヨンボードの威力に驚いていた。
5匹のうち、右耳が茶色の子猫2匹は、幼稚園で飼われることになった。

名前は、オレンジとアップル。
ミーちゃんの本当名前がレモンちゃんだと知った子供たちが付けたのだった。

まだ、小さいので、幼稚園の建物から外へは出さないようにしている。
プレイルームには、子猫たちのためのトイレも作った。

「あ! ミーちゃんが来た!」
「ちがうよ、レモンだよ」
「レモン、レモン」

3時になると、再び、ミーちゃん・・・
いやレモンは幼稚園に現れるようになった。

杏子は、思った。

ドラッグユタカを、お母さんの美容院のようにみんなが集まるお店にしようと。

《終わり》

※この物語は、岐阜県大垣市に本社を置く(株)ユタカファーマシーが
展開するドラッグユタカで実際にあったエピソードを元に小説化したものです。