第478号 ちょっといい話『幸せとは何かを思うとき』志賀内泰弘
「幸せ」とは何でしょうか。 10人いれば、10人の幸せがあります。 でも、誰もが「そうだよね」頷く幸せもあります。
12月10日、親友の鈴木中人さんが新刊を出されました。
「人生のそのときに 心に刻む10のこと 働く父から息子へのメッセージ」致知出版社
です。
ご存じの方も多いかもしれません。 鈴木さんは、お嬢さんを6歳のときに、がんで亡くされました。 その闘病・看病の日々から得たことを「いのちの授業」という演題で講演活動を続けています。
既刊「6歳のお嫁さん」実業之日本社は、 聖路加国際病院理事長の日野原重明先生も推薦していらっしゃいます。
今日は、新刊「人生のそのとき・・・」に中から、 「幸せとは何かを思うとき」というお話を紹介させていただきます。
* * * *
私と淳子は、結婚して社宅で暮らし始めます。 台所には、四人がやっと座れる小さなテーブルを置きました。
テーブルには、ピカピカの二枚のお皿が並びます。 新しい生活が始まることを感じました。
ある日、いつも通りに夕食をしていると、 はにかみながら淳子が言います。
「赤ちゃんができたから…」
と。
「そうか」
としか、言葉が出てきません。 次の言葉も「そうか、そうか」です。 淳子は、うんとうなづき、
「私、お母さんになるんだ」
と、涙を流します。 女性が母になるとはこういうことなんだ、そう思ったことを覚えています。
無事、景子が産まれました。生後百日目に、お食い初め(おくいぞめ)をします。 子どもが、一生食べ物に困らないように願い、赤ちゃんに食べ物を食べさせる儀式です。
ただ口にするといっても、食べる真似をするだけです。 まず、ご飯を食べさせます。景子は、少しなめると苦そうな表情で、直ぐに大声で泣き出します。 その様子に、私も淳子も大笑いです。
テーブルの上には、私と淳子、そして景子のお皿。三枚のお皿が初めて並んでいます。 家族が増えた、そのことを思いました。
そして、康平が産まれて、食卓のテーブルには四枚のお皿が並びます。 家族のイベントがあると、お皿にはいろいろなものが盛られます。
誕生日にはバースデーケーキ、お雛様やこどもの日にはお祝いのもの、 お月見にはお団子、クリスマスはケーキ…。みんな、とっても素敵な笑顔です。
数年後、景子が亡くなります。闘病中は、家族が離れ離れになっていました。 家族全員が揃って、久しぶりの朝食です。食卓のテーブルには、三枚のお皿が並びます。 景子のお皿は、遺影の前におかれています。景子は、もういない…。その現実を知らされます。 言葉にならない悲しさです。ただ無言で食べました。
景子の誕生日。
淳子は、バースデーケーキを買ってきました。景子が大好きだったいちごのケーキです。 チョコレートには、「景子ちゃん お誕生日おめでとう」とデコレーションされています。
みんなでハッピーバースデーを歌いました。景子ちゃんも一緒、そんな気がします。 今もお祝いをしています。
康平が下宿をすると、テーブルのお皿は二枚になりました。 家の中は、大きな穴がぽっかり空いたような気持ちです。
寂しいねと、どちらともなく言葉を交わしました。康平は、めったに家に帰ってきません。 でも、たまに帰省して三人分のお皿になると、家全体が明るくなります。
家族が一緒にいる、小さな幸せを感じるのです。
本当に不思議なことです。四枚から三枚になったときは、人生の不幸を感じました。 でも、二枚から三枚になると、幸せを感じるのです。お皿は同じ枚数なのに。
テーブルのお皿に盛られていたのは、「私の心」でした。 そして、悲しい、辛い、寂しいことがあるからこそ、幸せも感じられる。
そう思うのです。
◆著者:鈴木中人 「人生のそのときに 心に刻む10のこと 働く父から息子へのメッセージ」(致知出版社) http://www.amazon.co.jp/dp/4884749480
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一人で食べる食事は寂しいものです。
「おいしいね」 「うん、おいしいね」
そういう、当たり前の会話の中に、「幸せ」はあるのではないでしょうか。
「人生のそのときに 心に刻む10のこと 働く父から息子へのメッセージ」
は、そんな「幸せ」について、改めて考えさせられる一冊です。









