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第1751号 ほろほろ通信『古い傘だけど』志賀内泰弘

蒲郡市の広沢双美さん(55)が勤め先の病院へ向かう途中の出来事。最寄りの電車の駅で降りると、雨が降り出してしまった。いつもは自動車で通勤しているが、その日はたまたま電車を利用したので傘を忘れてしまった。

仕方なく上着を頭にかぶって足早に歩いていると、後ろから「おーい、おーい」という声がした。何度も聞こえたので振り返ると、広沢さんを呼んでいたことがわかった。ごみの収集所に車でごみを捨てに来ていた30歳くらいの女性だった。助手席には3歳くらいの娘さんを乗せていた。

彼女は車の中から傘を取り出して「よろしければ使ってください」と差し出した。思わず「ありがとうございます」言い、受け取った。とはいうものの、見ず知らずの方である。「どのようにしてにお返ししたらいいですか」と尋ねると「古い傘ですから処分してください」と言われた。差してみると取っ手の部分がはずれてしまった。それでも10分ほどの道のりを、ぬれずに行くことができた。

途中、雨にぬれながら歩いている人を見かけた。見覚えのある男性だった。患者さんだ。「よろしければ入りませんか」と声を掛けた。二人とも片側の肩が少しぬれたが、一本の傘のおかげで助かった。

職場に着いて、その話を同僚にしたら「じゃあ私も今度から車に傘を積んでおこうかな」と言った。さて、その壊れた傘はというと…。もったいないので捨てずに今も職場に置いてあるという。「いつか役に立つのではと思って」

<中日新聞掲載2008年12月14日>