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第1735号 ほろほろ通信『パトカーと園児たち』志賀内泰弘

名古屋市東区の久保和博さん(71)は、時折、幼い子どもたちの声に引かれてマンションの窓から外を見下ろす。目の前を走るJR中央線沿いの緑あふれる歩道を、時折近くの幼稚園の園児たちが、先生に引率されて散歩に来る。

久保さんご自身にもお孫さんがいる。六歳と四歳の女の子だ。かわいくて仕方がない。半田市に住んでいるので一、二ヶ月に一度は会える。でも、もともと子どもが好きなこともあり、わいわいとはしゃぐ声を耳にすると気になってしまう。

その日も眼下の横断歩道を十五人ぐらいの園児が列をつくって渡り始めたところだった。その時、突然大きな声が辺りに響きわたった。「先生の言うことをよく聞くんだよ」。それは、信号待ちをしていたパトカーのスピーカーから流れたものだった。

次の瞬間、今度はかわいい園児たちの声がこだました。「はーい!」。それも声をそろえて一斉に。そしてパトカーの方を見ながら手を挙げて、整然と渡って行った。そこはよく交通事故がある場所だという。「ガーン!」という音がして外を見ることもしばしば。パトカーの声というと、スピード違反などの取り締まりばかりで良い印象がない。それゆえに「パトカーの男性警官と園児たちの一瞬の言葉のキャッチボールに、ほのぼのとして心が温かくなりました」と久保さん。寒さの厳しい一月末ころの出来事。

<中日新聞掲載2008年5月5日>