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第1712号 ほろほろ通信『停電が教えてくれた』志賀内泰弘

名古屋市東区の前田英範さん(49)は昭和57年に電力会社に就職。最初、長野県の飯田営業所に配属された。主な仕事は停電のお知らせ業務だったという。電線の張り替えや変圧器の修理など、どうしても停電しなくてはいけない場合がある。また、自然災害も発生する。停電で仕事や生活が本当に困る人もあり、その苦情を承る仕事もしていた。

ある日の夕方のこと。豪雨のためにある村が停電になった。遠隔の山間地のため復旧に長時間かかることが予想された。現地へ飛び、広報車のスピーカーで「現在作業中なのでしばらく復旧までお待ちください」と巡回した。スイッチのある電柱の下で待機していると、急に無線交信が騒がしくなった。それは復旧作業が終了したとの知らせだった。あとは、スイッチを入れるだけ。作業員がスルスルと電柱に登りスイッチを入れたその瞬間、真っ暗だった集落が一斉にパアーッと灯をともした。あまりの美しさに言葉を失った。雨に打たれながら、先輩たちは何事もなかったように黙々と帰り支度を始めた。

気を取り直して「皆さま、長らく本当にご迷惑をおかけしました」と再び広報車を走らせた。時につらいと思っていた仕事だが、誰かがやらねばならぬ仕事。おしかりの厳しさこそが、逆に電気の必要性を教えてくれる。このとき見た村の灯こそが新入社員の自分に電気という財の尊さと、それに携わる公益従事者の責任の重さを教えてくれた。「若い世代にも伝えていきたい」とおっしゃる。

<中日新聞掲載2008年10月26日>