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第1706号 ほろほろ通信『町内会長のくじ引き』志賀内泰弘

名古屋市守山区の石黒紀美子さん(70)は、家が道路拡張工事に掛かり、最近引っ越しをした。新居に落ち着いて二カ月がたったある日のこと、町内の集会に出席した。議題は会長役をくじ引きで決めることだった。石黒さんは、幼いころからくじ運が悪かった。小学校ではいつもじゃんけんに負けて掃除当番になった。会社勤めの時は、お茶くみ当番に。商店街の福引はいつも参加賞のちり紙ばかりだった。


前の晩からの悪い予感が的中し、当たりくじを引いてしまった。顔から血の気が引いた。静まりかえった会場で、皆さんにお願いをした。
「引っ越してきたばかりで町内の人の名前と顔さえまだ分かりません。前に住んでいた所で会長をしていたことがあるので、その仕事の大変さは知っています。それだけに、責務を果たせません」と。

すると、すでに立候補で決まっていた会計役の人が会長を引き受けてくださった。さらに、困惑していた石黒さんの肩に温かな手を掛けていてくれた隣の席の人が、会計を。その二人に全員が拍手を送った。感謝の気持ちで目頭が熱くなった。

新しい会長さんに「あなたでは気の毒だ」と声を掛けていただいた。立ち退きの宣告があって以来、転居までの二年間の心労が癒やされた。さらに「この組は皆で助け合うから」という言葉に新天地での不安が吹き飛んだ。

<中日新聞掲載2008年4月7日>