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第1683号 ほろほろ通信『染みた水筒のお茶』志賀内泰弘

一昨年の夏のこと。吉良町の神谷美知子さん(59)は、知り合いが監督を務める高校の野球部の練習試合があり、友人たちと一緒に碧南市の高校へ応援に出掛けた。

その日は猛暑。
最初はみんなと応援団席で見ていたが、暑くてたまらなくなり一人外野側の木陰に移動した。校舎の壁にもたれて観戦していると、一人の女子高生がやって来た。ジャージー姿である。野球部のマネージャーか、それとも頼まれてお手伝いに来ているのだろうかと思った。

彼女は神谷さんの前をいったん通り過ぎたかと思うと、きびすを返して戻って来た。そして持っていた水筒のふたにお茶を注いで
「ぬるいですけど、どうぞ」
と差し出してくれた。さらに「熱中症になるといけないので」と言う。

折しも熱中症で倒れる人が続出していることがニュースになっていた。突然のことで驚いたが、しんどそうに見えたのだろうか。また高校生から見ると、よほど年配に見えて心配してくれたかもしれない。好意に甘えてありがたくいただき、のどを潤した。お礼を言ってふたを返すと、ほっとした表情で走り去って行った。

「町中で体の不自由な人に声をかけるのは大変なことです。その女子高生も見ず知らずの私に声をかけるのには勇気がいったことでしょう。それだけに気持ちがうれしくて感激してしまいました」と神谷さん。

何校かの野球部が来ていたので、彼女がどこの学校の生徒さんかはわからない。でも、町で女子高生を見かけるたび、今でもあの暑い夏の日のグラウンドが思い出されるという。

<中日新聞掲載2008年2月17日>