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第1657号 ほろほろ通信『両手いっぱいの花束』志賀内泰弘

今から4年前、成本光陽さん(27)は大学を卒業し、
瀬戸市の幡山東小学校に赴任した。担任は二年生。
希望と不安を抱えて毎日教壇に立ち、二週間目の出来事だった。

休み時間に、一人の女の子Aちゃんの様子に目が止まった。
いつもは明るくて元気なのに、なんだか表情が暗い。
しばらく様子をうかがうことにした。
すると、どうやら仲良しのBちゃんとけんかをしてしまったらしい。
原因は、Aちゃんが相手を怒らせるような嫌なことを
口にしてしまったためのようだ。Bちゃんは悲しげな顔をしていた。

成本さんは、教室で仕事をしながらしばらく見守ることにした。
お互いに仲直りしたがっているような雰囲気を感じたからだ。
休み時間が終わり、子どもたちが教室に戻ってきた。
Aちゃんが、ススッとBちゃんに歩み寄るのが見えた。

「話し合いをするのかな、それとも謝るのかな」
と遠くから注意深く見ていると、
Aちゃんは手にしていた「何か」を差し出した。
そしてBちゃんに「ごめんね」と言うのが聞こえた。
目を凝らすとそれは、両手にいっぱいの白い花束だった。

幡山東小の校庭は広い。その片隅に生い茂っている野草の中から、
ハルジオンを摘んできたのだった。Bちゃんは「いいよ!」と笑顔で答えた。
少し照れくさそうにして。成本さんは話す。

「今、SNS(会員制交流サイト)でキャラクターのスタンプで
気持ちを伝えるのが当たり前のようになっています。
でも直接話すからこそぬくもりが伝わるのだと思います。
相当、勇気がいりますが・・・。
子どもたちに大切なことを教えてもらった、
あの日のことが忘れられません」

<中日新聞掲載 2018年4月1日>