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第1649号 ほろほろ通信『俺も患者なんだけど…』志賀内泰弘

豊田市の梅坪台中学校教頭の宮本伸一さん(51)は、
若い頃から疲れがたまると、時々、意識を失うことがあった。
33歳の時、思い切って夏休みに検査をすると
脳腫瘍ができていることがわかり、ステージ3だと言われた。

手術は成功したが、術後、左半身が動かない。
「体育教師である俺がこの先、寝たきりか」と落ち込む。
テレビをつけると、連日、米中枢同時テロの模様を報じており、
一層不安にさいなまれた。

ところが、日にちがたつにつれ足が動くようになり、
自力でトイレまで行けるようになった。
リハビリが始まって、まだ三日目のこと。理学療法士さんから
「宮本さんは体育の先生だから、患者さんのリハビリの相手をしてあげて」
と言われて驚いた。
「おいおい、俺も患者なんだけど…」
と胸の内で思いつつも、なんだか妙にうれしくなった。
以後、リハビリの時間が待ち遠しくてたまらない。
病室でジャージーに着替え、意気揚々とリハビリ室に向かった。
他の患者さんから「先生よろしくお願いします」と言われ苦笑い。
だが逆にみんなから元気をもらった。

その経験が、宮本さんの教師人生を変えたという。
教え子が病気で入院することになった時のことだ。
普通なら「頑張れ」とか「大丈夫」としか言葉が見つからないものだ。
だが宮本さんは
「いいか、落ち込んでないで病室で積極的に他の患者さんたちと話をしなさい。
すると、心が前向きになるよ。みんなが助けてくれるはずだ。
気分転換だと思って入院生活を楽しんで来なさい」
と送り出した。
無事、その子は元気になって学校へ戻って来たという。

<中日新聞掲載 2018年3月11日>