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第1641号 ほろほろ通信『自閉症の息子の成長を見守って』志賀内泰弘

名古屋市昭和区の鈴村育子さん(58)には、二人の子どもがいる。
上が男、下が女だ。その息子さんは、幼い頃から手が掛かって悩まされた。
食事や着替えなどの動作が遅く、何度「早くしなさい」と言ってもできない。
かといって本を開くと一読しただけで全部記憶できてしまうので、
単に人より部分的に少し成長が遅いだけと思っていた。

ところが小学四年生の時、病院で自閉症と診断された。
時間が守れない。人と話すのが苦手。
ある時は叱り、ある時は根気よく教えた。
だが、育子さん自身も難病にかかってしまい、
息子さんの面倒を見るのもままならなくなる。

ついには主人と教育上の方針の違いから対立し、
離婚することになった。その時、息子さんは21歳。
家を出た育子さんの元へ、一日50回以上も電話がかかってきた。
「お母さん」と泣き叫ぶ。それが5年間も続いたという。

現在、29歳になった息子さんは障がい者職業訓練の事業所に通い、
自立を目指して励んでいる。会いたいのはやまやま。
だが一度会ってしまうと、甘えてしまう。
だから、ぐっと我慢の日々だ。

その息子さんから、久しぶりに電話があった。
「お母さん、あのさあ、俺には妹がいるんだね」と言う。
以前、一緒に暮らしていたのに、
妹がいることを最近初めて知ったような口ぶりに戸惑った。
だが、それも病気のせいだ。

「その妹がさあ、彼氏ができてさあ。社長の息子なんだ。
将来、俺は社長と兄弟になるんだよ」
とうれしそうに言う。

「なんともとぼけた話ですが、
妹の幸せを喜んでいるのです。
それが何よりうれしいです」
と育子さんは話す。

<中日新聞掲載2018年2月25日>