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第1628号 ほろほろ通信『道草をする母子に学ぶ』志賀内泰弘

一宮市の千秋中学校校長の川口和彦さん(55)は、
三年前に着任して以来、毎朝校門の前に立ち
「おはよう!」と子どもたちを迎えている。

ずいぶんたってからのことだ。
目の前を通り過ぎる二人の保育園児とその母親の姿に気付いた。
「なぜ、車か自転車で送っていかないのだろう」
と川口さんは疑問に思った。
母親はどこかの会社の事務服を着ている。
おそらく、この後出勤するのだろう。

よくよく見ていると、お兄ちゃんも妹も真っすぐには歩かない。
川面で羽を休めているカモを指さして止まる。
田んぼの中をのぞいたり、道端の草花をながめたりする。
普通の母親だと「早くしなさい!行くわよ」と言うものだ。
ところが、決してせかしたりはしない。
たぶん「この花なんていうの?」と聞かれたのだろう。
ニコニコ笑ってそれに答える。

いつしか川口さんは、二人の子とあいさつを交わすようになった。
妹の方が先に「おはようございます」と言う。
続けてお兄ちゃんも「おはようございます」と続く。
二人とも中学校の金網に顔を寄せて、校庭をのぞき込む。
部活の朝練の様子を見ているのだろうか、
キラキラと瞳が輝いている。見るものすべてに興味津々。

「母親にとって、朝はどの家でも戦争のように忙しいはずです。
きっと、あの母親も…。あくまでも推測ですが、
あえて子どもたちと接する時間を大切にするため、
道草を楽しみながら付き合っているのだと思うのです。
効率ばかり追い求めている自分を振り返り反省しました。
母子を見習い、少しずつ地域の自然にも目を向けるよう心掛けています」
と川口さんは話す。

<中日新聞掲載 2018年1月28日>