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第1577号 ほろほろ通信『わが子のように見守って』志賀内泰弘

鈴木正則さん(56)はこの四月、豊田市の猿投台中学校に校長として赴任。
ところが着任早々、地域に不審者が出没しているという情報が入った。

全校生徒に注意を促すとともに、先生たちで巡回し、
事故を未然に防ぐ対策をした直後の出来事だった。
女生徒の一人が「Sさんから借りた傘を返しに来ました」と言い、
職員室にやってきた。先生たちは何のことかわからない。
事情を尋ねると…。

猿投台中は学区が広く、一部生徒のバス通学を認めている。
前日の下校時、その女の子が友達三人とバス停の前のお店の軒先で
雨宿りをしながらバスを待っていると、そばに一台の車が止まった。
中から女性が小走りにやって来て「貸してあげる」と傘を差し出されたが、
先生の言葉が頭をよぎったという。
「不審者に注意しなさい」

女性は、子どもたちのそんな気持ちを察し
「私の息子も三月まで猿投台中に通ってたのよ」と自分の名前を告げ、
さらに先生方の名前を何人も口にして、疑念を解こうと一生懸命努めてくれた。

遠慮したが、雨はやみそうにない。最寄りのバス停から自宅まで距離がある。
ありがたく受け取ると、女性は
「学校へ預けてくれたら仕事帰りに取りに行くから」とだけ言い、
去って行かれたという。

鈴木さんは「卒業生名簿を調べ、すぐにSさんにお礼を申し上げました。
世知辛い世の中です。地域の方に積極的に『おはよう』など
あいさつの励行を指導してきましたが、今回はやむにやまれず。
そんな中、わが子のように見守ってくださる方がいるおかげで
生徒たちは幸せです」と話す。

<中日新聞掲載2017年11月05日>