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第1573号 ほろほろ通信『6枚の餞別袋』志賀内泰弘

大府市の松橋政人さん(64)が、アルバムの整理をしていると
餞別(せんべつ)袋が出てきた。数えると六枚。
それは四十年以上も前のものだったが、
不思議なことに色あせてはおらず真新しく見えたという。

松橋さんは家庭の事情から、中学を卒業するとモーターの製造工場に就職した。
そこで働きながら定時制高校に通ううち、大学進学を夢見るようになる。
高校で陸上を始め、全国大会に出場したことがきっかけだった。

自分も大学で教員資格を取って定時制高校の教師となり、
働きながら学ぶ人たちに陸上の指導をし、
全国大会に連れて行きたいと思ったのだった。

家の経済状態を考え悩みに悩んだが、会社を辞める決意をした。
最初は会社から引き留められたが、職場のみんなも応援してくれるようになった。
そして退職の時、組み立てや機械など六つの班の人たちから餞別をもらった。
胸が熱くなり「絶対に教師になる」と心に誓った。

奨学金を受け、複数のアルバイトを掛け持ちして勉強した。
その結果、大学を卒業すると教師になることができた。それだけではない。
定年退職するまでの間に、県高等学校体育連盟の定時制通信制陸上競技の総監督として、
十六回も全国大会で男女総合優勝に導くことができたのだった。

松橋さんは、
「会社員時代、大勢の仲間から恩を受けました。
長い年月がたち、もう当時の人たちに恩返しすることはできません。
でも、その恩を次の人たち…教え子に送ることができました。
直接ではないけれど、恩を返せたのではないかと思っています。
そして、受けた恩は、けっして忘れることはできません」
と話す。

<中日新聞掲載 2017年10月29日>