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第1566号 ほろほろ通信『おかんの口癖』志賀内泰弘

大府市の永瀬渓道(けいどう)さん(28)は建設会社に勤めている。
大学を卒業し運送会社に就職したが、やりがいを見いだせず
仕事もハードだったので転職した。
ところが、今の仕事の方がもっと苦労が多く、
無我夢中で毎日を過ごしてきた。


そんな中、マンションの修繕工事に携わることになった。
未経験の大規模な現場で不安になった。
何より、居住者一人一人と円滑にコミュニケーションを
取ることが必要であり、プレッシャーに襲われた。

工期や騒音などの説明に歩く中、一組の母娘と親しくなった。
母親が病気で五十歳代の娘さんが介護をしている。
男手がなく二人暮らしなので、片付けがなかなかできない様子。
永瀬さんは目が回るほど忙しかったが、
網戸の取り外しやバルコニーの整理を手伝ってあげた。

工事も最終段階に入った十二月のある日のこと。
その母娘から永瀬さんにメールが届いた。
「ささやかながらお礼をしたいので来てほしい」という。
部屋を訪ねると留守だったが、ドアのノブに紙袋が掛けてあった。
中にはマフラーと一通の手紙が…。
「本当の息子のようで楽しい五カ月でした」

「実は、私のおかんは介護士の仕事をしていて老人ホームで働いています。
『人にやさしく』が口癖。人に親切にする際には、見返りを期待してはいけない。
純粋に人のために尽くしなさいと教えられてきました。
それまでの私は自分のことを考えるだけで精いっぱいでした。
おかんにこのことを報告したら
『いつからそんな立派になったの?』
と笑われました。
これがきっかけで、仕事にやりがいを感じるようになりました」
と永瀬さんは話す。

<中日新聞掲載 2017年10月08日>