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第1556号 ほろほろ通信『パスポートを紛失して』志賀内泰弘

碧南市の井沢絵梨香さん(22)はこの春、
大学の友達二人と一緒に上海へ卒業旅行に出掛けた。
三人は到着早々、路上でタクシーを止め、乗り込んだ。
すぐに警官が近寄ってきて運転手と口論を始めた。

警官は「ここは、客を乗せてはいけない場所だ」と言っているらしい。
結局、三人は降ろされ、タクシーは去ったが、
井沢さんのバッグは車内に置いたまま。中にはパスポートも入っていた。

日本総領事館へ駆け込むと、閉館時間を過ぎているのに、
職員らがホテルや警察などに連絡してくれ、
帰国できるように尽力してくれた。

だが、帰国に必要なビザの申請は複雑で、手間がかかる。
出入境管理局では何度も書類の不備を指摘されたが、言葉が分からない。
そんな中、二人の友達は丸二日間、総領事館、ホテル、
警察署を三度も行き来するのに付き添ってくれた。
テーマパークや買い物などの予定を、すべてキャンセルして。

ビザの発行まで七日かかるという。
友達は「あなた一人置いて帰るわけにはいかない」
「帰国を延ばす」と言ってくれ、
涙が出そうになった。でも、友達にも予定がある。
本当は、異国で一人になるのは不安でたまらなかったが、
「気持ちだけでうれしい。勇気づけられたわ」
と帰国を促した。

三日目。出入境管理局からホテルに戻ると、
先にチェックアウトした友達の置き手紙があった。
「一緒に居てあげられなくてごめんね。
でも三人いつも一緒だから大丈夫」
と書いてあり、涙があふれた。

「友達、そして現地でお世話になったみなさん、ありがとうございました。
社会人としてのスタートに際し、友情や思いやりの大切さを
改めて学ぶ良い経験になりました。
今後は困っている人に親切にしてご恩に報いたいと思います」
と井沢さんは話す。

<中日新聞掲載 2017年9月03日>