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第1550号 ほろほろ通信『えがおの木』志賀内泰弘

岡崎市の鈴木和子さん(73)の家の庭に、トネリコの木がある。
十年ほど前に引っ越してきた時から植わっていた。

昨年の春のこと。
庭の水やりをしていたら、その木の枝に掛けてあるプランターの中に、
名札が差してあるのが目に留まった。
「えがおの木」と書かれている。見覚えのある文字。
近くに住む孫娘(当時小学五年生)のものだとすぐにわかった。

ある日、和子さんは「あの名札は何?」とお孫さんに尋ねた。
すると、お孫さんは木の上の方を指さした。
目を向けると、木の幹にフェルトペンで
二つのニコニコマークが描いてあった。
言われるまで、気付かなかった。
またまた「これ何?」と尋ねたら…。
「おじいちゃんが元気になるといいなあ、と思って描いたの」と言う。

和子さんはハッとした。その時、ご主人が病気で入院中だった。
毎日のようにお見舞いに出掛けていた。
日曜日には何度か、お孫さんも一緒に連れて行ったことがある。
お孫さんにつらい気持ちを悟られないように
振る舞っていたつもりだった。
でも、お孫さんは、周りの暗い雰囲気を感じ取っていたのだ。

「それまで、夫婦ともに病気をしたことがなかったので、
相当落ち込んでいました。でも孫のおかげで、心が明るくなりました。
その祈りのおかげもあってか、無事退院して今まで通りの生活を送っています。
その後もわが家では、その木のことを『えがおの木』と呼んでいます。
雨風で少しづつ薄れてきていますが、その木を見るたびに、
ついつい忘れがちな笑顔の大切さを思い出します」
と和子さんは話す。

<中日新聞掲載2017年8月20日>