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第1546号 ほろほろ通信『バスに追い抜かれた高校生』志賀内泰弘

今年の四月五日、豊田市の臼井功子さん(74)は友人と一緒に、
日帰りで路線バスの旅に出掛けた。
桜やカタクリの花をめで、三州足助屋敷などを散策。
午後四時半ごろ、足助から帰りのバスに乗り込んだ。

十分ほどたったときのこと、バスの前に必死で走る男の子の姿が見えた。
高校生のようだ。靴を高く蹴り上げ、全力で駆けている。
友人と「きっと次のバス停で、このバスに乗りたいんだね」
「間に合うといいね」などと話した。

だが、無情にもバスは高校生を追い抜いて行く。
それでも高校生は走るのをやめない。
バスの後方を振り返ると、窓越しに姿が小さくなっていく。
そうこうするうちに、次のバス停が見えてきた。
「あーあ、とうとう間に合わなかったか」と、友人二人でため息をついた。

ところが…。
バスは乗降者が一人もいないにもかかわらず、バス停で停車した。
そして、ドアが開けられたまま動かない。
「あっ!運転手さんが待っていてくれているんだ」
しばらくして、高校生が息を切らして乗り込んできた。
車内に運転手さんのアナウンスが流れた。

「みなさま、お待たせして申し訳ございません。
ご協力ありがとうございました」

続けて運転手さんが高校生に
「乗客のみなさんにお礼を言ってくださいね」と言うのが聞こえた。
すぐさま彼は、乗客に向かって「ありがとうございました」と言い、
深く頭を下げた。

「他の乗客も『間に合ってよかったー』と口々に言い、
車内は温かな空気に包まれました。
降車時に運転手さんの名札を確認しました。
名鉄バスのO・Sさん、ありがとうございました」と臼井さんは話す。

<中日新聞 掲載2017年8月13日>