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第1531号 ほろほろ通信『泣いたらあかん』志賀内泰弘

みよし市の吉村友幸さん(71)の生家は、岐阜県関市。
周りはほとんどが農家で、農繁期は学校が休校になり、
子供も総出で手伝いをした。

小学六年の時、Nちゃんという二つ年下の女の子がいた。
田植えの時、
「おまえの家は貧乏で田んぼがないから、遊んでおれていいなあ」と、
心ない男の子にからかわれて泣いていた。
そのNちゃんが、原因不明の病気で脱毛症になった。
徐々にひどくなり、三分の一の髪が抜けてしまった。
それでも彼女は、恥ずかしさに耐えて登校した。

しかし、またまた、あの意地悪な子に、
「ハゲがうつるから向こうへ行け」と言われ泣いていた。
その後も「だるまさんが転んだ」をして遊ぶ時に、
「おまえと手をつなぐと、ハゲがうつる」といじめられた。
吉村さんは「泣いたらあかん」と手を強く握って励ました。

月日が流れ、帰省した際にNちゃんのうわさを耳にした。
なんと大地主の農家に嫁いで、幸せに暮らしているという。
まるで実の妹の出来事のようにうれしかった。
「子供の頃にできなかった田植えがしたかったのかな」と思った。

それから数年後、またNちゃんの話を耳にした。
嫁ぎ先の家の土地に東海北陸自動車道が通ることになり、
億万長者になったという。対して、Nちゃんをいじめた子は、
あまり恵まれた生活をしていないとも聞いた。

「実は中学二年の時、下校中にNちゃんの友達から
『これNちゃんから渡してくれって頼まれて』と、
菜の花とツバキの束を渡されたことがあるのです。
少し離れた場所で、Nちゃんがこちらを見て笑っていました。
悲しいかな、彼女の頭には髪の毛が一本も残っていませんでした。
Nちゃんと手をつないだ時のぬくもりを、今も忘れません」
と吉村さんは話す。

<中日新聞 掲載2017年7月23日>