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第1527号 ほろほろ通信『サクランボを仏前に』志賀内泰弘

今から二十年ほど前、水野英紀さん(48)が初任校として
務めた瀬戸市の道泉小学校での話。

地域に開かれた学校で、多くの学区民が校庭の草取りなどをしてくれていた。
その中で、特に熱心に花壇などの世話を毎日してくれる男性がいた。
岩野只志さんだ。野球部顧問だった水野さんは、土日も学校へ出掛けることがあり、
その姿をしばしば見かけた。夏休み中の水やりは本当にありがたく、頭の下がる思いがしていた。

それから十年がたったある日の事。岩野さんが亡くなられたと耳にした。
他校に異動しており知らなかったとはいえ、葬儀に出られなかったことが悔やまれた。
岩野さんは校庭にサクランボの木を植え、
「実がなったら、子どもたちが喜ぶかな」
と話していたと聞いた。
くしくも岩野さんが亡くなった二ヶ月後、初めて実を付けた。
道泉小の先生方が、岩野さんの仏前に供え、
「サクランボがなりましたよ」と報告したという。

年月が過ぎ、三年前、水野さんは再び道泉小に赴任した。
サクランボの木は健在だったが、児童はもちろん教職員も入れ替わるので、
誰が植えて世話をしていたのかを知る人はいなくなっていた。
昨年も実を付けたものの、ほとんど野鳥に食べられてしまった。

今年は、ネットで防護して世話した。
おかげでたわわに実り、全校児童がおやつとして食べた。
その時、水野さんは校内放送で「岩野さんという方が…」とサクランボのいわれを説明した。
すると、各教室に自然に拍手が沸き起こった。

「今年もたーんと実を付けました。子どもたちも喜んでます。岩野さんよかったですね」
と水野さんは話す。

 

<中日新聞 掲載2017年7月9日>