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第1503号 ほろほろ通信『踏切での手助けに拍手』志賀内泰弘

今月二月の初め、早朝の出来事。
一宮市の玉置光代さん(62)は、車でスーパーマーケットに出掛けた。
途中、名鉄伊勢駅の近くの踏切に差し掛かると、
遮断機が下り始めたため、停車した。

その時だった。目の前の三十代ぐらいの女性が、
遮断棒を持ち上げて線路内へ入っていくのが見えた。
ここは名鉄とJRの線路が並んでいるので、
ひんぱんに遮断機が下りる場所として有名。

そのため、違反と承知しつつも、
遮断棒を手で上げて通る人を良く見かけるという。
玉置さんは「またか」「危ないなあ」
と眉をひそめて女性を目で追った。

ところが、である。
その女性は向こう側の遮断機の近くの線路の上で、
うろたえて立ち尽くしている年配男性に声を掛け、
踏切の外へ連れ出したのだった。
良く見ると、その男性は白い杖を手にしていた。
目が不自由なようだ。

その後、女性はこちらを向き、
遮断機の前に立って電車が行き過ぎるのを待った。
通過後に渡ってくるつもりらしい。
ここで玉置さんはハッとした。

推察するに、女性は踏切の線路内で目の不自由な男性とすれ違った。
踏切を渡り切って、いったんこちら側へ来てから。
男性のことが『大丈夫かな』と心配になって振り返った。
急に警報機が鳴りだしたからだ。

すると案の定、男性が動揺して、
おろおろしている様子が目に留まった−。

「女性は、慌ててきびすを返し、助けたはずなのです。
それなのに、一瞬とはいえ、違反者だと思い込み
心の中で非難してしまった自分が恥ずかしいです。
自らの危険を顧みず、速やかに手助けした女性に、
心から拍手を送りたいと思いました」
と玉置さんは話す。

<中日新聞掲載 2017年6月4日>