たくさんのいい話をたくさんの人に読んでもらいたい・届けたい・広げたい【運営】プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動

無料メールマガジン
いい話を読む
いい話を投稿する
みなさんの感想
いい話グッズ購入

いい話を読む

第1476号 ほろほろ通信『タクシー運転手が天職』志賀内泰弘

小牧市の荒井桂太郎さん(55)は昨年、半導体製造関連の会社を早期退職した。
家族のためにもまだ頑張って働かなければならない。

同業他社の門をいくつかたたいたが、色よい返事は得られなかった。
業種のこだわりを捨て、縁あってタクシー会社に勤めることに決めた。
そして不安を抱きつつ研修期間を過ごした。

研修を終え、一人で営業運転を始めたばかりのころのこと。
休憩のためコーヒーを買いに、コンビニに立ち寄った。
レジに並ぶと、車いすを利用する高齢の女性が前にいた。
介助者はなく、一人で来ているらしい。

様子をうかがっていると、指も不自由らしく財布から
小銭を取り出しにくそうにしている。
「大丈夫ですか」と声を掛けたのがきっかけで、
自宅まで車いすを押して送って差し上げることになった。

途中、その女性から悩み事を聞いた。
「娘が事故に遭い、半身不随になってしまいました。
近所の病院まで送迎してくれるタクシーが見つからず困っています」と。

朝、迎えに行くのはいいが、帰り時間に合わせて再び病院に行かなくてはならない。
すると、その間の時間が仕事のロスになる。
ましてや近距離のため、いい顔をされないという。
とっさに荒木さんは「私でよかったら」と申し出た。

「心底、『ああっ!人の役に立ててうれしい』と思いました。
実は、故郷は大分なのですが、なかなか帰省できません。
母親の介護をする代わりだとも考えたのです」
と荒木さん。

娘さんを病院まで送ると、普段、無表情なのににっこり。
「その笑顔を見て、タクシー運転手は天職だと確信しました。
そして不安な気持ちも吹き飛んだのです」と話す。

<中日新聞掲載 2017年4月9日>