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小冊子_表紙「ギブギブ」

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第1472号 ほろほろ通信『空の上の七羽の折り鶴』志賀内泰弘

あま市の村上真優美さん(62)の故郷は長崎県の対馬。
昨年の12月、母親が危篤だと連絡があり飛行機に飛び乗った。
9月の父親の七回忌法要では元気だったのに…。

真優美さんは出掛けに千代紙をかばんに忍ばせておいた。
そして、中部国際空港から福岡空港へ向かう飛行機の中で、
母親のことを思いつつ鶴を折った。
千羽とは言わないまでも、できるだけたくさん折ろうと。

三十羽ほど折ると、福岡に到着するとのアナウンスが流れた。
出口に近づくと、客室乗務員さんから
飲み物のプラスチックカップを差し出された。
「え!?」
首を傾げて受け取る。
目をやると、透明のカップの中には折り鶴が入っていた。数えると七羽。
「お席で、ずっと鶴を折っていらっしゃったので、
 私たちも少しだけお手伝いができないかと思いまして…。
 どうかお気をつけて」とおっしゃった。
胸が詰まってしまい、深く頭を下げて、
「ありがとうございます」と答えるのが精一杯だったという。

福岡空港では対馬空港への乗り換えが遅延し、
はやる心にさらに心配が募った。
でも、つい先ほどもらった折り鶴を手にして、
「お母さん、頑張ってね」と祈った。
駆け付けた病室で、ほとんど意識のない母親に、
もらった折り鶴のいわくを話すと、黙ってうなずいてくれた。
母親の手を握り励まし続けたが、翌日の深夜眠るように亡くなった。

「鶴の願いが通じ、母の最期に間に合いました。
 いただいた折り鶴はお棺に納めさせていただきました。
 お名前を尋ねる心の余裕がありませんでした。
 全日空の30歳くらいの客室乗務員さんです。
 心よりお礼申し上げます」

<中日新聞掲載 2017年4月2日>