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第1434号 ほろほろ通信『大勢に最期を見送られて』志賀内泰弘

名古屋市千種区の鳥居美也子さん(75)の母親は、90歳の時、
足腰が不自由になったため特別養護老人ホームへ入居した。
車いすの生活だったが、他の入居者の洗濯物を畳む手伝いをするなど、
いたって元気だった。

だが、徐々に体力が落ち、食事も自分で食べられなくなり、
やがて会話も交わせなくなってしまった。
それでも呼び掛けると、瞳や唇がかすかに動く。
こちらの言葉は理解できているようだった。
やがて、家族には最期の日が近いことが告げられた。

昨年の9月11日の早朝。ホームの職員から電話が入った。
「呼吸が薄くなってきています」と。
鳥居さんは弟と一緒に駆け付けたが、間に合わなかった。
5年以上寝たきりだったので
「お母さん、楽になれてよかったね」
と話し掛けた。

ふと見ると、母親の顔に化粧がしてある。
眉を描き、口紅を差しきれいになっている。
職員の心遣いに胸が熱くなった。

その後、広い部屋へと移動し家族の時を過ごしていると、
館内放送が流れた。
「○○さんが、これから出られます。
 お見送りいただける方は玄関の方へお越しください」と。
母親と共に玄関に向かうと、ずらりと車いすの入居者や
職員が大勢待っていてくれた。

なんとその中に、以前母親の介護の担当だった職員の姿があった。
グループの他の施設に転勤になったはずなのに…。
連絡を受けて、わざわざ駆け付けてくれたのだとわかった。
鳥居さんは「仕事を離れてまで、母の最期を見送ってくださり感激しました。
満104歳でした。母はなんて幸せなんだろうと思いました」と話す。

<中日新聞掲載 2017年1月22日>