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第1430号 ほろほろ通信『運転手さんの「わざわざ」を見習って』志賀内泰弘

名古屋市港区の瀧根綾香さん(28)は、その日の朝も通勤のため、
最寄りのバス停からバスに乗り込んだ。
車内は大勢の乗客がつり革につかまりほぼ満員になった。
途中、いくつめかのバス停を発車した直後のこと。

窓越しに、車いすに乗った男性がやって来るのが見えた。
「このバスに乗りたかったのかな」と思っていたら、再びバスが急停車した。
まだ1メートルも動いていない。すぐ先の信号が赤になり、止まったのだと思った。

次の瞬間、前と後ろの乗降口が再び開いたかと思うと、
運転手さんが外へと飛び出した。スロープ板を抱えている。
「あっ」と思う間もなく、遠くの車いすの人のところまで駆けて行き、
バスまで押して来る。
そして、後ろの乗降口にスロープ板を掛け車内へと一緒に乗り込んだ。
入口付近の乗客は、誰もが自然に奥へと詰めた。
運転手さんは「そちらの席の方はご協力をお願いします」と頼んだ。
折り畳み式になっている一人掛け用の座席に座っていた人が、
すぐに立ち上がった。そこへ車いすをベルトで固定させ、運転席へと戻った。

「きっとこの運転手さんは、車いすの人が、
 いつもそのバス停から乗ることを覚えていたのでしょう。
 停車して待つだけでなく、わざわざ迎えに走るなんて素晴らしい。
 私は銀行の窓口で働いています。
 以来、運転手さんを見習い『わざわざ』を心掛けるようになりました。
 雨降りの日にはタオルを貸したり、急な夕立の際に傘を貸したりと。
 それまで目の前の仕事で精いっぱいでしたが、
 運転手さんのおかげで勉強になりました。
 ありがとうございます」
と瀧根さんは話す。

《中日新聞掲載 2017年1月15日》