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第1722号 ほろほろ通信『父からの500通の便り』志賀内泰弘

岐阜市にお住まいの名知あやさん(30)の父親は、学校の先生をしていた。そのため、幼いころからほとんど一緒に旅行に出掛けた記憶がない。それどころか、父親は勤め先のことが優先で、名知さんの学校の行事にも参加できなかった。それが原因で、いつしか、なんとはなしに父娘の間にぎこちなさを感じるようになっていた。

名知さんが大学生活のため、京都で初めての一人暮らしを始めた時の話。入学式の当日、父親からはがきが届いた。新しい環境への不安と戸惑いに、早くも心が疲れていたところだった。冒頭には「愛するあやへ」と書かれてあった。家族の近況の後、風邪をひかないようにと結ばれていた。ただそれだけの内容だったが、涙が止まらなくなった。

この後、来る日も来る日も父親からはがきが届いた。健康のことを気遣ってくれたり、日々の何気ない出来事の報告だったり。母親とのけんかの話が書かれてあったことも。初めのうちは照れくさかったが、だんだん返事を書くようになった。そのやりとりで、心がつながっていくことがうれしかったという。

父親からのはがきは、4年間でなんと500通を越えた。あれから10年。結婚して来春には赤ちゃんが生まれる予定だ。「父親と同じように子供を愛していきたいです。それが父からもらった愛情のお返しだと思います」と。父からの手紙は、今も宝物だという。

<中日新聞 2008年11月16日>