第487号 ★こころにビタミン賞★『ベンチでいいよ?(第二回受賞作品)』
徳島県阿南市 氏名:多田大祐
<心に響いた「たった一言」> ベンチでいいよ?
<「たった一言エピソード」> 高校生のころサッカー部に所属していました。
3年生が引退し、自分たちの2年生を中心とした新チームになった後も 完全なレギュラーではなかったボク。後半から出たり、前半だけだったり。
なかなか1試合すべての時間、出してもらうことはできませんでした。 それどころか試合中ずっとベンチに座っていることもありました。
このころのボクは“絶対にレギュラーを取ってやる!”というより、 “レギュラーになれんのだったら辞めようか・・”なんてネガティブ思考。
そんな頃、付き合っていた彼女に何度か聞かれました。
「今度の試合観に行っていい?」
ボクは適当な理由をつけ、ごまかし、その度に断っていました。
もちろん本当の理由は来てもらっても試合に出られるか分からないからです。 このことを何とか悟られまいと必死でした。 そのために「試合にはほとんど出てる」と嘘をついたこともあります。
そこまでしても彼女のまえでカッコつけたいボクは、 カッコ悪いところを見せたくなかったんです。 そんなボクの気持ちなんて知らずに観に行きたいという彼女。 断るボク。
しかし、そんなことを何回か繰り返しているうちに彼女は食い下がってきました。
「今まで1回も観たことないし、観たいって言よんやけん、いいでぇ!」
もうごまかすのは無理だと判断したボクは、正直に言おうと決めました。
「あのな、ホンマはオレ・・試合に出れるかワカランのよ。 というか、最近はあんまり出れてない。」
彼女へのことがネガティブな気持ちと連鎖した影響でしょう。 それがサッカーにも影響し、このころは今まで以上に試合に出れなくなっていました。
この告白はすごく自分の中でカッコ悪いことでした。
「え、じゃあずっとベンチに座っとるってこと?」
嫌われる・・。 そう覚悟しながら
「うん。」
と頼りなく頷くしかできないボクに彼女は言いました。
「やった!」
耳を疑いました。 彼女はつづけます。
「ベンチでいいよ? ほの方が近くにおれるし。 あたし、あんまりサッカーのこと分からんけん、別に試合には興味ないんよ。 だってベンチにおったらしゃべれるんだろ? 試合に出られとっても観るだけやし」
もう笑うことしかできませんでした。
「ベンチに座って彼女としゃべっとったら監督に怒られるわ!」
笑いながらそう言い、ボクは嬉しさと安堵感に包まれていました。 しかし同時に、やはり自分としては試合に出て カッコいいところを見せたいという気持ちも高まってきたのです。
そこから気持ちを新たに懸命に練習した結果、 3年生になるころにはレギュラーを取ることができました。
「レギュラーおめでとう。ベンチでもいいけど。」
ベンチに座らなくなったボクに、 少しふてくされた祝福をしてくれた彼女はとても可愛かったです。









