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- 第 106 話 -  『「サプライズ」見えないものに価値がある』 
東京の品川区に、目黒雅叙園という
結婚式場(兼ホテル・レストラン)があります。

館内には百段階段と呼ばれる文化財的な建物もあり、
観光スポットの一つにもなっています。

 その目黒雅叙園のPR誌「雅」に
コラムを連載させていただいています。

「見えないものに価値がある」というシリーズで、
目黒雅叙園を舞台にした様々な出来事を紹介するコーナーです。

 今回は、その「雅」2007winter号に
掲載されたスタッフの方から聞いた「ちょっといい話」を、
下記に転載させていただきます。


                         志賀内泰弘



 「シリーズ第九回「見えないものに価値がある」 


    「サプライズ」

 
その新婦のご両親は、ゆえあって、
結婚式を挙げることができなかった。

そして、語りつくせぬほどの苦労の中で、
お嬢さんを育てられた。

後にそのことを知った新婦は、


 「大きくなって、自分が結婚するときには、
             必ずこうしよう」


と考えていたことがあった。

披露宴のメインイベントであるケーキカットが終わると、
司会者がこう続けた。


 「実はこれから、もう二組のご夫婦に、
  ケーキカットをお願い申し上げます。
  新郎新婦のご両親さま、どうぞ前にお進みください」


会場がざわめいた。
サプライズだった。

かの日に挙げられなかった結婚式の代わりに、
両親にもケーキカットをしてもらおうと新婦が提案したのだった。

新郎とも相談して、
新郎の両親も一緒に執り行ってもらうことにした。

まったく知らされていなかった二組の夫婦は、
戸惑いながらも喜びを隠せず雛壇へと上がった。


さて、「ファーストバイト」といものをご存じだろうか。
First biteと書く。訳せば、「初めてかじる」の意。

「ファーストイーティング」ともいい、
西洋の古い慣習である。

ケーキカットの後、フォークですくって新郎が新婦に、
そして新婦が新郎にと、お互いにケーキを食べさせてあげる。

新郎が新婦に食べさせるのは、

 「これから食べることには苦労させないよ」

という意味。

新婦が新郎に食べさせるのは、

 「美味しいご飯を作ってあげるわ」

という意味だという。
もちろん、新郎新婦は、
にこやかにファーストバイトをしてカメラに収まった。

 そして今度は、新郎新婦の両親の番である。
衆目の前で、少々照れながらも、ケーキを食べさせ合った。
きっと、心の中では、

 「今まで、美味しいご飯をありがとう」
 「いいえ、どういたしまして」

と言い合っていたに違いない。

「サプライズ」。
見えないものに価値がある。


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