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| - 第 94 話 - 『宮崎学園のトイレ掃除のおばちゃん』 |
『宮崎学園のトイレ掃除のおばちゃん』
宮崎学園高校には、富高敏子さんという、
私がひそかに師と仰ぐ清掃担当の女性がおられます。
富高さんは、私が、
「こんにちは」
と挨拶すると、いつも満面の笑顔で、
「ありがとうございます」
と言ってくださいます。
初めて富高さんのトイレ掃除を見た時、
私はビックリ仰天してしまいました。
汚れた便器を、素手に雑巾を持って奥まで手を突っ込んで、
全身を揺らしながら、ゴシゴシ磨いておられるのです。
先日、生徒たちに、
「あなたの見つけたプチ紳士・プチ淑女」というテーマで、
レポートを書いてもらったときのことです。
その中の、何人かの生徒が、
富高さんについて書いてくれていました。
「私の学校のトイレ掃除のおばちゃんは、
いつも笑顔で挨拶をしてくれます。
トイレ掃除をする時は、いつも素手で、
ニコニコしながら掃除をしてくれています」
「決して楽しい仕事じゃないのに、
いつも笑顔でいられるのはすごいなあと思います」
これを読んで、私はそのレポートを拡大コピーして、
富高さんに渡しました。
富高さんはいつもの満面の笑顔で、
「ありがとうございます」
と、とても喜んでくれました。
そして、次のように話してくださったのです。
「私は頭が悪いから、トイレ掃除だけは、
一生懸命やろうと思っています。
この仕事が決まったとき、息子から
『生徒は学校に勉強しに来てるとよ。
母ちゃんは激しいから、邪魔にならんようにしてね』
と言われたんですよ。
だから、それだけは気をつけています」
私はその時、悪事がばれてテレビで
謝罪しているような「偉い人」よりも、
この小柄な「トイレ掃除のおばちゃん」のほうが、
はるかに人間として上だと確信しました。
そして、富高さんが喜んでくれたことを、
レポートを書いた生徒に伝えました。
それを聞いた生徒もまた、笑顔で喜んでくれたのです。
私は、今までの自分自身の失敗や挫折、
そしてそこから立ち直ってきた経験から、
いくつかの「人生でうまくいくコツ」がわかってきました。
自分の体験談やたとえ話などを織り交ぜながら伝えているのは、
次のようなことです。
名づけて、「中元流・幸せになる5つの法則」。
(1)人や物事の、「いい面」に目を向ける。
(2)人を喜ばせることが、自分の喜びにつながる。
(3)小さいことが、大きいことを変えていく。
(4)まず自分から与えると、いつか何らかの形で自分に返ってくる。
(5)頑張りすぎないほうが、うまくいく。
なんとなく頷けるものもあれば、
「そうかなあ」と、すぐには信じられないものもあるでしょう。
私の生徒たちは、日頃から私の話を聞いて、
それなりに理解してくれているようです。
しかしそれを実際に体験して実感したり、
習慣化して実践することは、
たとえ大人でも難しいですよね。
志賀内編集長のことを知り、その文章を読んだとき、
私は「この方とは感性が似ている」と直感しました。
さっそく「プチ紳士を探せ!運動」に参加し、
生徒たちにも実践させてみたところ、
すごいことに気づいてしまいました。
プチ紳士とプチ淑女を「探す」だけで、
今までのように熱く語らなくても、
前の5つの法則が、あっという間に定着してしまうのです。
もう一度、先ほどの「幸せになる5つの法則」を見返してください。
「プチ紳士を探せ!運動」=「幸せになれる」ということが、
よくわかると思います。
(1)人や物事の、「いい面」に目を向ける。
プチ紳士やプチ淑女を探すことで、
自然とその習慣が身についてしまいます。
とりたてて「プラス思考」などと言わなくても、
探すこと自体がポジティブな面に焦点を当てる実践になっているのです。
「プチ紳士になろう!運動」ではなく、
「探せ!運動」であることは、実はとても深い意味がありそうです。
(2)人を喜ばせることが、自分の喜びにつながる。
その生徒は「掃除のおばちゃん」を喜ばせ、
おばちゃんが喜んだことを聞いて、
とてもいい笑顔を見せてくれました。
人を喜ばせると、自分まで嬉しくなることを、
身をもって体験できたのです。
その中継ぎをさせてもらった教師の私もまた、
喜ばせてもらっています。
(3)小さいことが、大きいことを変えていく。
これは理想論かもしれませんが、世界中の人が「せーの」で
プチ紳士とプチ淑女を1人ずつ探せば、
平和なんて一瞬で実現するのではないでしょうか。
宮崎学園高校の実践は小さなものですが、
私は、生徒一人の後ろには、
少なくとも数十人の家族、親戚、友だちがいるのだと思って、
この運動に取り組んでいます。
(4)まず自分から与えると、いつか何らかの形で自分に返ってくる。
人を喜ばせた生徒が、それを聞いて嬉しく思ったことで、
すでにその通りになっています。
志賀内編集長の言われる「ギブ・アンド・ギブ」に、
私自身はまだまだ未熟ですが、賛同しています。
学校の教師としては、気持ちよく「ギブ」した生徒が、
取る(テイク)ではなく、自然に受け取る(レシーブ)流れも
作っていきたいと考えています。
(5)頑張りすぎないほうが、うまくいく。
すでにおわかりでしょうが、誰もがんばっていません。
プチ紳士とプチ淑女を見つけるのが楽しくて、
人の喜ぶ顔を見るのが嬉しくて、
みんなでワイワイやっているだけです。
この活動によって「人に優しい学校」になって、
いい地域、いい社会をつくっていければ…と、
つい「頑張って」しまいそうになるのは、私だけのようです。
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