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『破れた紙袋』
新幹線で上京したときのことでした。
正月のこととて車内はかなり混んでいました。
幸い三人掛けの通路側の席に座ることができました。
窓側は若い男性で、眠っているようでした。
真ん中の席は和服の奥ゆかしい中年の女性でした。
「次は品川」
のアナウンスがあったとき、女性が降りようと席を立った拍子に、
持っていた大きな紙袋の取っ手の付け根がビリビリと破けて
中身が散乱してしまいました。
すると、窓側の若い男性が自分の紙袋の中身を出して空にすると、
途方にくれている女性へ素早く差し出したではありませんか。
女性は、その袋に詰め替えると、
何度も礼を言って降りていきました。
男性は取り出した紙袋の中身を、
小さなものはコートや上着やズボンのポケットへ押し込み、
大きなものは胸に抱いて何事もなかったかのように、
また目を閉じました。
とっさのことで、
床に落ちた女性の荷物を拾ってあげることもできずにいた自分が
恥ずかしくなると同時に、
なんだか心が温かくなるのを覚えました。
* * * *
(ここから編集長・志賀内泰弘)
できません。できません。
きっと、私もできません。
予備の袋を持っていたならまだしも、
自分の物を提供するなんて。
それも、心の中で一瞬も迷わずに行動しないと間に合わないのです。
「こういう人になりたい」
「私もなれるかなぁ」
「努力しよう」
と思ったのでした。
それにしても、この若い男性。
「何事もなかったかのようにまた目を閉じた」
とは、なんてカッコイイのだろう。こういう、
「カッコイイ人になりたい」
と思いました。
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