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- 第 68 話 -  『サンタクロース、スキー場へゆく』 

『サンタクロース、スキー場へゆく』



                編集長・志賀内泰弘


むかしむかし、あるところに炭鉱で栄えた村がありました。
ところが、時代の波に押されて、
炭鉱は閉山になってしまいました。
財政難の村を再生するために、
皆でスキー場を始めました。


これが大当たり。
都会から若者や家族連れがわんさかと訪れ、
村は元気を取り戻しました。

ところが、です。
またまたピンチ。

地球温暖化のせいで、
この数年というもの雪がまったく
降らなくなってしまったのです。


その村に、今年もサンタクロースがやって来ました。
毎年、靴下の中に子供たちが
欲しいおもちゃを書いたサンタさんへの手紙が入っていました。

子供たちにプレゼントを配ろうとして、
サンタさんは戸惑ってしまいました。

その手紙には、どの子も同じ願い事が書かれていたのです。
それは…


  「おもちゃはいりません。
   その代わりに雪がいっぱい降りますように」


お父さんやお母さんたちが困っている姿を見て、子供たちは、


  「もう一度スキー場に大勢のお客さんが来るといいなぁ」


と思ったのでした。

しばらく腕組みをしていたサンタさんは、
おもちゃの入った大きな袋を地面に置き、
村で一番の大きな木に登りました。
そして、囲炉裏から持って来た灰を手に取り、
呪文を唱えてまきました。


  「枯れ木に花を咲かせましょう…おっと間違えた」


サンタさんは苦笑いをしてやり直しました。
(花咲爺さんじゃなかったわい)
もう一度、呪文を唱えます。


  「野山に雪を降らせましょう」


するとどうでしょう。
空から雪がコンココンコと降って来たではありませんか。

あっという間にゲレンデは滑走可能になり、村人は大喜びです。
それだけではありませんでした。

な、なんと、その雪はピンク色だったのです。
次々と空から、桜の花びらのような雪の結晶が舞い降りてきて、
野も山も、村人の家も学校も、ピンクに染め抜いてゆきました。
まるで春が来たかのように。

満開の桜色に染った村は、
「ピンクのスキー場」として大評判となりました。

全国からスキー客だけでなく、ピンクの雪を見に観光客がやって来ました。
子供たちは、元気に働くお父さんやお母さんたちを見て、
空に向かって言いました。


 「サンタさんありがとう」


サンタさんの故郷の村まで、
その子どもたちの声は聞こえて来ました。

サンタさんは、ちょっと顔を赤らめて、
誰にも聞かれないようにぽつりとつぶやきました。

 「呪文をちょっと間違えて、怪我の功名だったかな。
  でも良かった良かった」

メリー・クリスマス。

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