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| - 第 64 話 - 『不思議な出会い』 |
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「不思議な出会い」
編集長・志賀内泰弘
つい、先日のことです。
ちょっと、体調を崩してしまいました。
医者に行こうかと迷いました。
その日、人と会う約束があったからです。
思い切って、少し早い時間に家を出ました。
約束の時間に間に合うように、
医者に行こうと思ったのです。
さて、いつもの、最寄の地下鉄の駅で、
白い杖をついた女性を見かけました。
声をかけました。
「お手伝いしましょうか」
「お願いします」
すぐに返事が返ってきました。
電車に乗って、しばらくして尋ねました。
「どこまで行かれるのですか」
「はい、○○まで」
ほっとしました。
同じ方向だったからです。
というのは、以前、他の新聞で書いたことがあるのですが、
こんな経験があるからです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何年も前、京都を旅した時のことです。
四条通りの雑踏の中で立ち尽くす、一人の女性を見かけました。
人の波に肩を小突かれて、よろけました。
よく見ると、白い杖を手にしています。
慌てて駆け寄り、「お手伝いできますか」と声をかけました。
弱りました。「○○行きのバスに乗りたいのですが」と言われましたが、
バス停がわかりません。
仕方なく、道行く人に訊ねて100メートルほど先のバス停までお連れしました。
私の向かう方向とは反対だったので、ここで別れることにしました。
「ありがとうございます」とお礼を言われましたが、この先がちょっと心配です。
そこで、バスを待つ列の前の若い女性に声をかけました。
「この方を降りる場所までヘルプしていただけませんか」と。
ところが、です。振り返ったその女性は何も応えず、
一歩後ずさりして何もなかったかのように身体を正面に戻しました。
「わかりました。ここまでご苦労様」
などという答えを期待していた私は、言葉を失ってしまいました。
そうこうするうち、バスがやってきて、みんな乗り込みました。
白い杖の女性も。無事に目的地に着くことを心から祈りました。
このあと、ずっと後悔しました。私もあの若い女性を責められないなと。
なぜ、彼女が知らん振りをしたか理由はわかりません。
ただ、私は急ぎの仕事があるわけでもなく、
旅の予定を変更すればよいだけのことだったのです。
でも、再び考えました。たとえ目的地まで案内できたとしても、
帰りはどうするのか。明日は、明後日は。そうなるとキリがありません。
どこまでが、必要な善意なのでしょう。 (一部抜粋)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、途中の駅で、乗り換えました。
やがて、私の目的の駅に着きました。
「じゃあ、お気をつけて」
と言って、降りようとすると、
「私も降ります」
とおっしゃるのです。
「え!?・・・だって、先ほど、○○へ行かれると言われたのに」
「いえいえ、○○行きの電車に乗ると言ったつもりで」
と。
なんという偶然。
なんだか、嬉しくなりました。
ついでなので、
「じゃあ、目的地までご一緒しましょう」
と言うと、
「よろしくお願いします」
「どこまで行かれるのですか」
「はい、△△ビルまで」
「ええええ・・・・!」
なんと、私が行こうとしていたお医者さんが
入居している高層ビルの名前なのです。
今度は、怖くなって聞きました。
「ひょっとして、これからお医者さんに行かれるのですか」
「はい、そのビルの4階の」
「私は、その4階の◇◇内科へ行くのです」
「私は、××クリニックへ」
ちょっとだけ、残念。
でも、ちょっとだけ恐ろしくもあり。
こんな偶然があるのですね。
名古屋がいくら狭いといっても、二百万都市です。
これを偶然と呼ぶには、無理があるような気がしました。
体調を崩したおかげで、
人のお役に立てました。
ということは、ひょっとすると、
そのために体調が悪くなったのかも。
その方とは、
またどこかで、お目にかかれそうな気がしています。
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