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- 第 63 話 -  『モスバーガーのおばちゃん』 

モスバーガーってご存知ですか。

日本でただひとつの、日本生まれのハンバーガーチェーンです。
作り置きをせず、すべて注文を受けてから作ります。

スタッフのひともおばちゃん、おじちゃんが多い。
高校生や大学生のバイトと違ってとても自然体なんです。

ある日の夕方、いつものようにテリヤキバーガーを頬張りながら、
なんとなくカウンターの方をみていると、
若い女性がやってきました。

 「テリヤキバーガーください。トマトとピクルス、
  それにケチャップは多めで。タマネギは抜いてください」

よくある注文です。
しかし、それに対する返事がよくある返事ではなかったのです。

おばちゃんアルバイトのその店員さんは、

 「あんた、タマネギ嫌いなの?
  若いうちから好き嫌いはだめよ。
  タマネギは栄養の宝庫なのよ。
  あんた、まだ独身でしょ。
  これから結婚して子供を生んで、
  旦那さんの面倒見ていくのに、
  栄養つけなきゃだめ。
  ちょっと火を通しといてあげるから食べてごらん。
  だまされたと思って。
  ほんとにおいしいのよ。いいわね」

その女性、あっけにとられて、思わず、

 「はい。お願いします。」


・・・窓際のカウンターで食べ始めた彼女の目に、
涙が浮かんでいるのに気付きました。

やっぱりタマネギが辛かったのでしょうか・・・

想像するに、彼女、多分東京で一人暮らしをしているのでしょう。
一人だけの侘しいハンバーガー・ディナー。
それが、おばちゃんアルバイトの一言で心温まる時間になった。
長いこと誰からもこんな言葉をかけてもらった事が、
無かったんじゃないかな。
嬉しかったんだ、きっと。

帰り際のカウンターで、

 「ご馳走様でした。
  すごく美味しかった。
  また来ますから、タマネギお願いします!」

 「いいわよ、いつでもいらっしゃい。
  でもハンバーガーばかり食べてちゃだめよ」

 「えっ、お店の方がそんなこと言っていいんですかぁ(笑)」

 「あらっ、そうね。今の、店長には内緒よっ!(笑)」

帰っていく彼女の後姿、
来た時よりもずっとずっと元気に見えました。

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