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- 第 57 話 -  『優しい気持ち』

 

「優しい気持ち」

        編集長・志賀内泰弘


平成18年8月27の日付け中日新聞朝刊の「中日春秋」に
こんな記事が掲載されていました。
一部を抜粋して、紹介しましょう。


     *     *     *     *     *


二週間前の日曜日の午後、
乗り合わせた電車内に濃い色の大きなチョウが
迷い込んできたときのことだ。
外に出られないようで、つり革にとまっている。

どうしたらよいものかと見ていたら、
仲間と談笑していた若者がすっと席を立って、近寄っていった。

そして、チョウの羽をそっとつまんで、
次のホームに出て放してやっていた。

何げない顔で車内に戻ってきた若者の姿は、いいものだった。


     *     *     *     *     *


こういう記事を朝から読むと、元気が出てきます。
新聞って、暗いニュースばかりですからね。

さて、きっと、皆さんも同じような経験がおありではないでしょうか。
何年も前のこと。
友人の家族と軽井沢にでかけたときのことです。

プリンスホテルの横にあるショッピングモールで
買い物をしていました。
この建物は、全面がガラス張りになっています。
そこに、一羽にツバメが飛び込んできました。

おそらく、ガラスが見えなかったのでしょう。
バードウオッチングの先生に聞いた話では、
都会では、ガラス張りのビルが多くなったせいで、
ビルに激突して死んでしまう野鳥が増えているといいます。
ちょっと、悲しい話です。

そのツバメは、少し小柄でした。
おそらく、この年に生まれたばかりの子ツバメでしょう。

モールの中を、何度もガラスにぶつかりながら、
飛び回りました。
あちこちで、「あっ」と歓声が上がりました。

とうとう、ガラスに当たった瞬間、床に落ちてしまいました。
私が走って近寄ると、先に小学生の男の子が来ていました。
男の子は、そっと、ツバメを両手で拾い上げました。

覗き込むと、まだ羽を小さくバタバタさせています。
男の子は、そのままモールの外へと運び出しました。
ふわっ、と手を空に掲げた瞬間、
ツバメは再び羽ばたきました。

そして、スイ〜。

それを見ていたモールの中の人たちは、
またまた歓声を上げました。

きっと、こんなことは、毎日、どこでも行われていることでしよう。
こんな優しい気持ちは、誰の心の中にもあります。
それは、人に対してとは限りません。
生き物すべてに対して。

誰の心にあるのだから、
あとは、「思いやり」を行動に移すだけです。
カンタン、カンタン。

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