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- 第 23 話 -  『まだ恩返しをしていません。。。』 

学生時代、私は自転車で旅行するのがとても好きでした。

大学二年生の夏。
地元岐阜を出発し、鹿児島の志布志へフェリーで渡り、
一日かけて、佐多岬まで自転車を走らせました。

そこから、私のちょっとした冒険がはじまりました。
目指すは、北海道宗谷岬!

7月の、まだ薄暗い朝、
独り静かに、佐多岬をスタートしました。

まず九州を熊本経由で縦断し、下関に渡り、
そのまま日本海側を北上。
新潟の糸魚川から内陸へ入り、長野へ。
長野では、志賀高原を半日かけて登り、
群馬側へ降り、仙台を目指します。

仙台に着くと、三陸海岸に沿ってさらに北上し、
遂に本州最北端の大間崎に到着。

この間、約3週間。
ほとんどが、橋の下や海岸での野宿だったので、
TVも新聞も読んでいません。

「天候が怪しいな…」
と思いつつ、私はフェリーに乗り、函館を目指します。

まさか、台風が来ていることも知りませんでした。

時間はもう暗くなった夜でしたが、
北海道は、その時が初上陸だったので、
とてもワクワクしていました。

しかし、到着した時、愕然とします。
外は暴風雨。。。

聞けば、台風が近づいているという。

「やばいな、宿(寝るスペース)を探すか…」

暴風雨の中、雨合羽を着て、
自転車を走らせます。

風は思った以上に強く、
なかなか前に進みません。

北海道のバス亭は小屋になっていると聞いていたので
“寝心地のよさ”そうなバス亭を探しました。

しかし、夜間のため、
なかなかみつけることができず、
2、3時間走り続けました。

そして、ようやく見つけたバス亭で、
一泊することにしました。

自転車をバス亭の中に入れ、
寝袋をサイドバックから取り出し、
ベンチに横になります。

外はスゴイ風と雨の音です。
なかなか寝付けません。

そんなとき、突然バス亭のドアが開きました!

「おい、にいちゃん!」

私は飛び起きました。

野宿生活が長いので、
今までにも、いろいろなことがありました。

寝ていた公園を追い出されたり、
子どもにロケット花火をテントに投げ込まれたり、
港では暴走族に絡まれそうになったり…。

私は、突然の声に、つい「すみません…」と
言いかけた瞬間、

「うちに来いや!
 きょうは台風が来ているから」

まったく見ず知らずのお兄ちゃんですが、
私は不思議になんのためらいもなく、
その場に自転車を置き、
身一つでお兄ちゃんの車に乗りました。

車の中で、
バス亭の中に自転車ごと入れていたのに、
どうしてわかったのか、聞いてみました。

「道路ですれ違ったのを見たのよ」

…。

ということは、Uターンして、
わざわざ探しに来てくれたということです。

しばらくして、部屋に着き、
久々のお風呂に入りました。

お兄ちゃんは独り暮らしのようです。

ご飯も腹いっぱい食べさせてくれました。

その晩は、すぐに寝たと思います。

翌朝、力がでるようにと、
ヒレカツを出してくれました。

そのとき、少しだけ会話をしたと思います。
お姉さんが当時、岐阜に住んでいるということだけ、
覚えています。

そして、

「早くバス亭に戻らないと、
 自転車が心配やな」

と言って、私を再び車に乗せて、
昨晩“出会った”バス亭に行きました。

その途中、なんとお礼を言えばいいか、
ずっと考えておりました。

日本縦断をして、いろいろなことがありましたが、
さすがにここまでしてくれたのは、はじめてです。

到着する直前、
勇気を振り絞って、

「本当にありがとうございました。。。
 ぜひお礼がしたいので、
 お名前と住所を教えてもらえませんか…」

と言うと、お兄ちゃんはこう言いました。
この時の“約束”が私はまだ果たせないでいます。

「いいよ。
 もし君が、同じようにがんばっている奴を見かけたら、
 同じことしてやりな」

そう言って、私を車から降ろし、
同じ道を引き返して行きました。


私はこの旅行で随分成長した、とオヤジが言います。
刺々しく、血の気の多い人間でしたが、
少しは人の親切が理解できる人間になったと。


十数年たった今も、
恩返しの輪が私で止まったままです。


                 小島より。

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